鹿児島市池之上町。家鴨(あひる)馬場と左衛門坂が交わる交差点角に、銭屋(ぜにや)という名の店がある。たばこや酒を売っているように見えるが、どうして銭屋なのか。まさかお金を商っているわけじゃあるまいに。
濱崎二郎さん(69)多美子さん(62)夫婦が営む食料品店。もともと戦前に二郎さんの父徳蔵さんがいづろで創業し、上竜尾町を経て、1948(昭和23)年に現在地に落ち着いた。いづろから入れると、約80年になる老舗だ。その意味でこの屋号は、時代がかっていて、いかにもと思わせる。
屋号を提案したのは二郎さんの母ミサさん。独身のころ関西で働いていて、京都にあった銭屋という店の名前が印象に残った。池之上町に店を出す際、「銭屋にしよう」と提言したのだという。戦地へ赴いた徳蔵さんが1948年に引き揚げてくるまで、5人の子供を育てながら商売を続けたミサさんの意思が、新しい店に生かされた。
店の2階外壁に掲げられた古びた木製看板には、金ぱくが塗られていた。「屋号からしてご利益がありそうですが、なかなか。修業が足りないのでしょう」。多美子さんは、こう言って笑った。 |
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