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'05/09/13 夕刊掲載 
美登里のオフタイム

〜  8  〜

「物持ち女王」 その2

唐突ながら、先日友人が恋人と別れた。それはいいのだが(よくない!)、問題は恋人の遺物。歯ブラシ、服、食器など選別ゴミに仕分けして捨てたと彼女はサッパリ。「宝石は? ほら、あのダイヤの指輪!」「あぁ、あれはまだ…」「そうね、立爪リングはリフォームしやすいもんね」

昔、寺尾聰の『ルビーの指環』という歌に、♪オレに返すつもりなら、捨ててくれ…という歌詞があったが、(恋人は捨てても貴金属は捨てないでしょう)と思った私は当時からクールな高校生でした。

男性はどうだろう? デビュー前、ルームメイトあてに別れた男(の子)から彼女の日用品が入った大きなボストンバッグが送り返されてきた。女々しいというより、そのボストンバッグが彼女のお手製で、キルティングの布にイニシャルのアップリケという超ラブリーなものだったゆえ、扱いに困ったのだろう。

とはいえ、中には銀のペアのイルカのペンダントも入っていた。「もう! あっちで全部処分すればいいのに。あ、待って、でも銀は溶かして何かできるかも」と彼女。たぶん恋に対する執着心が男と女とでは違うのではないだろうか?

女性の恋は一話完結型。いろんな葛藤(かっとう)や喜怒哀楽があってもその恋ごとにケリをつけて次に進む。対して男性は長編小説の一部ごとに恋をしていく。ここで終わりかと思うと3部先に回想シーンや再会などが用意されていて、読者(というか本人)は前のページをめくったり現在と過去を行ったり来たりしながら恋という1つの全集を楽しんでるフシがある。

もちろん女にも再会や迷いはあるが、それは前の恋の延長ではなく、再会した時点で新刊の『恋愛小説』だ。どちらが良くも悪くもなく、それが男女の違いのような気がする。

何が言いたいかというと、別れた恋人からのプレゼントをアクセサリーとして平気で身につける行為は、決して女性が非情なわけではなく、それくらい潔く恋をしている生き物だから、と思うのだ。宝石はブランドと同じで生活から遠いプライド。でも写真や手紙は生々しい日々の記憶。恋にピリオド打ったら、もらった指輪ににらみをきかせて身につけすてきになってやる! という計算高さも実は前向きに生きる手段のひとつなんだと思う。

というわけで、恋少なき私の引き出しにも数点貴重品がしまってある。18金のネックレス。クリスマスに「何が欲しい?」と聞かれ「ほそーくても『本物』がいい!」と恋人にのたまった私は、やっぱり超クールな女子大生でした(笑)。

(辛島美登里=シンガー・ソングライター)
鹿児島市出身の辛島さんのエッセー。隔週火曜日に掲載します。
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