「1年に1度くらいは生の音に触れよう」…分厚いエレキ楽器の音がはやる中、13年前に弦楽四重奏を入れて始まったクリスマスコンサートが、純クラシックとして千住明さんの編曲の下、フルオーケストラをバックにクラシックホールで行われるようになって7年目の冬を迎える。
ポップスを歌う自分にとってクラシックはまぁ、エコノミークラスとビジネスクラスの差みたいな引け目があり(笑)、でもそれもカーテンひとつで仕切られた座席の違いだけ、めくってどんどん歩いていけばいいのだ、ということに気づくのに5年かかった。クラシックもポップスも音を奏でる環境が異なるだけで、すべては人の耳を通り心にたどりつき、幸せに変わっていくものなのだと。
私はなんでも形になるのに時間のかかる人間で、高校受験も1浪したし、デビューも28歳だし、ミュージシャンや仕事仲間と普通に話せるようになったのもごく最近のことだ。先日俳優の佐野史郎さんと共演した。ドラマの中で彼が私のピアノに合わせてギターを演奏するシーンなのだが、当然ながら『冬彦さん』であるはずもなく(失礼!)、誠実で柔らかなその人と和やかに撮影できた。名古屋のホテルで朝食をとっていたら「あれ? 辛島さん!?」と高音の男性の声に振りむくと、南こうせつさんだった。お互い知らずに背中合わせでコーヒーを飲んでいた、それがおかしくてうれしくて、背中合わせのイスに振り向いたままの体勢で気づけば30分話していた。
好きだなと思う人に素直に向かっていこう、それを教えてくれたのは去年試みた屋外の無料イベントに集まる観客の人たちだった。通りがかりなのに忙しいだろうに、雑多な表情はどこにもない。普段演歌しか聞かないであろう人々も立ち止まり明るい駅の中で涙ぐむのを見た時、私は信じることを学んだ。
幼子があやめられる事件が絶えない。無垢(むく)な子供の心に「他人を信じちゃだめよ」と教育することがとてもつらい。セントラル愛知交響楽団とのコンサートで観客に向かい、「人を信じ、好きになることは素晴らしくて、さよならすることは悲しいこと、それを伝えるのが音楽だと思います」と気づけば話していた。そんな思いでサイレント・イヴを歌おうとは夢にも思わず、私も観客もオーケストラをバックに泣きながらこの曲を刻んだ。生の音、生の人の良心に接する機会がもっと増えたらいいと、今私にわかることはそれだけ、しかない。


















