WBA世界ライトフライ級王者決定戦の試合は、プロレスとレスリングの違いもおぼつかぬ私だけでなく74歳の母もテレビ観戦したくらいだから、その反響も大きく、よって判定の是非など私が述べるまでもない。ただ今さらながら、対戦相手の存在は興味深かった。
試合当日、肩をいからせ白の上下で集団ドヤドヤ会場入りした19歳の亀田興毅に対し、安っちぃレインボー柄のジャージー姿でコーチとヒョコヒョコ現れたベネズエラ出身27歳のファン・ランダエタ。ニラミをきかせ威かくする亀田に比べ、ベビーフェースのランダエタの瞳はなんとつぶらなことか! プシ、プシッと早々にウォーミングアップに励む亀田だったが、ランダエタは控え室のベッドにしばらく体を横たえ目を閉じリラックスから始めていた。
ライト級から体重を絞り込まなければならなかった亀田の体は、骨格に沿った細かい筋肉がウエストの細さを強調し、どこか禁欲的にいちずな『少年の美しさ』があった。けれどミニマム級から体重を増やしてライトフライ級に臨んだランダエタの肉体には、引き締まりながらもゆるやかにうねりを持った筋肉が『ブロンズの深み』をたたえていた。
試合運びは周知の通りだが、必死にボディージャブを浴びせる亀田に対し、ランダエタは無駄なエネルギーを使わぬよう狙ってフックを刺した。そのキュートな顔とは裏腹に相手のスキをいやらしいほどついてくる。亀田は正攻法。正面からすべての力で挑む。まるで初めての恋をした生娘と、経験豊かな熟女の恋人争奪戦のようだった。せっかく今回亀田が勝利したのなら、世の中の熟女や悪女の誘惑に負けないよう正妻ならぬ、チャンピオンの座をしたたかに守ってくれればと願うしかない。
話は変わるが、試合の行われた8月2日は、奈良の母子3人が死亡した放火事件の犯人の長男(16)と父親(47)との面会の様子を、弁護士が文書で公表した日でもあった。長男は会うとすぐに泣きじゃくりながら何度も謝罪し、父親は暴力を振るったことをわび「お前の罪はお父さんも一緒に一生かけて償っていく、また会いに来ていいか?」と尋ねると「会いにきて」と答えたという。
亀田父子とは天と地の境遇にこの父と子は居合わせた。「オヤジのもんや」とチャンピオンベルトを渡された史郎氏。殺人者の息子を背負う医師の父親。最高から始めるのと最悪から始めるのとどっちが苦しいだろう? どこから始まってもいい。ゴールは幸せであってほしい、すべての親子に。


















