南日本新聞のウェブサイト373news.comです

メニューをとばして本文へ移動します
県内ニュース スポーツ 社  説 南 風 録 黒ヂョカ 映画案内 きょうの催し 気象情報 おかいもの
桜島ライブカメラ 動画歳時記 懐かしフォト 焼酎蔵めぐり サッカー王国 こどものページ そいじゃが通信 母 校 便 り 見学アルバム
'06/10/10 夕刊掲載 
美登里のオフタイム

〜  35  〜

食べ物の記憶

食べ物の話が楽しいのは、自分史と重なるからだろう。秋、運動会でお弁当の後、母がナシをむいてくれるその日が小学生の私にはナシの解禁日だった。「20世紀」というナシを食べながら21世紀の現在を生きることなど想像だにしなかったころ。カキ、リンゴの季節と続き、冬休みはミカンの食べ過ぎで手のひらは黄色くなった。

あのころもスーパーにはマツタケとか並んでいたのだろうか? 「マツタケの土瓶蒸し」とはどんな料理だろう? 大人になって、本物の土瓶蒸しが料亭で出てきた時、どう食べたらいいのか途方にくれた。実は「土瓶」をずっと「鉄瓶」と勘違いしてて、鉄瓶に入ったマツタケ汁をお茶のように回し飲みするものだと勝手に想像していたのだ。なぜマツタケ汁かというと、おすしの出前によく「マツタケのお吸い物の素」がついてきて、その顆粒(かりゅう)にお湯を注いで椀(わん)にしていたから、マツタケはだしをとるもの、なんて無邪気に信じていた。

徳之島で初めて食べたモンキーバナナのおいしさも忘れられない。船旅で腹ペコだった私たちは、民宿で出された大皿にうず高く積まれたバナナを、気づくと家族で全部たいらげてしまって、宿のおばさんに目を丸くされた。海では熱帯魚が岩場で泳ぎ、底には真っ黒なウニがゴロゴロ針を出していた。「これをすし屋で食べると高かぞぅ!」父の悔しい気持ち、大人になった今ならわかる(笑)。

たこ焼き、お好み焼きは関西の大学時代。みりちゃん大阪ではな、お好み焼きをおかずにご飯食べるんやでと友人に聞き、関西の人は炭水化物摂取量が多いはずと卒論のテーマにするか迷った。東京でもたくさんの食材が印象に残る。フォアグラ(見た目牛タン、味脂系レバーペースト)、フォカッチャ(バターでなくオリーブオイルをつけて)、フカヒレ(こしのある春雨?)、フロマージュ(ヤギチーズは漁港のにおい)…Fで始まる食べ物だけでもまだまだある、恐るべし日本の食文化!

しかし今私が好きな場面のひとつは、休みの日、米を土鍋で炊き、蒸らしている間に買い物に出て、戻って玄関を開けると「炊きたて」のにおいが迎えてくれる瞬間。みそ汁と卵焼きと納豆を素早く用意し、土鍋のふたを開けると出来立てのごはんの湯気がぽわ〜っと顔にはり付く。これかなりお肌にいい蒸気かも!と顔を回してなりきりエステ。お茶わんによそった白飯とみそ汁にホッ。大人になってグルメの引き出しは増えたけど「ごはんのにおいがわかる」って、これ究極の日本人の証し…だと思いません?

(辛島美登里=シンガー・ソングライター)
鹿児島市出身の辛島さんのエッセー。隔週火曜日に掲載します。
インデックスへ
 
南日本新聞開発センター
鹿児島市住宅公社
pico
日経平均



おくやみ広告メールお申込受付中
かごしま囲碁サロン
ケータイで
373news.com
   を見る
南日本新聞モバイル二次元コード
新聞社合同サイト



 
 
 
県内ニュース スポーツ 社  説 南 風 録 黒ヂョカ 映画案内 きょうの催し 気象情報 おかいもの
記事・画像等の一切の無断転載、二次利用をお断りいたします。これらの著作権は南日本新聞社または各情報提供者にあります。