静岡駅でタクシーに乗る時のこと。マネジャー「ウッ」。私「どうしたの?」。「いや、ちょっとヒザをやっちゃったみたいで」「え? そんな段差どこにあったっけ?」「いや、な、なんとなくちょっと、アイタタ…」。わっはっは、もー年なんだからァとみんなでからかったその翌日、私はさっそうとハーフパンツ&ブーツで取材場所へと歩き出した、つもりがゴキッ★ヒザにツ〜ンと痛みが走った。いつもの通いなれた何の障害もないなめらかなアスファルトでなんでコケるんだよ!
歯医者さんが言う。「辛島さん、すごく力入れてかむでしょう?」。そういえば、たくあんをかむ音がいいね、と音楽プロデューサーに褒められたっけ。「歯はかむためにある、だからどんどんかんで鍛えよう!って思ってたんですけど」「違いますよ。歯は使うほどに老化していくんですよ」。先生に言われて、梅干しの種をかんで割って歯の健康バロメーターにしていた今までの暴挙を大いに反省した。
最近はウオーキングシューズの快適さにハマッてしまい、ヒールのある細い靴は仕事以外ではほとんど履かなくなった。道端でコケ、歯が弱り、ヒールの靴は履きたくない…もしあなたもそうだとしたら、「大丈夫。コケないように姿勢を正し、歯のケアと食事のバランスに心がけ、普段は歩きやすい靴で活動し、とっておきの時だけヒールで決めればいいのよ」と言ってあげたい。デートでヒールを履いてきた女性を長々歩かせる無神経な男性とはつきあわないくらいのプライドを持つことだって、時には必要だ。
無理して若ぶると次の日ダメージが倍でやってくる。でもぼーっとしていると、私やマネジャーのように何もない場所でコケたりする。体の日々のSOSと対話し、時には助けを借りたり甘えることも大切かもしれない。「え〜っと、あれ何だっけ? ほらあの、あそこの角を曲がると…」「えーっとそれはあの店の隣の?」「そうそう、あそこのメロンパンがおいしいのよ!」「あぁ私も大好き!」。どこをどうやったら同じパン屋にたどり着けるのか、その迷い道が妙にうれしい。自分のだめな部分を「情けないやっちゃ」と受けとめ見守るような「心の遊び」を持てるようになれば、自分にも他人にも優しくなれる気がする。その年なりの自分を楽しもうとさえ思えてくる。
駅の階段でご婦人とすれ違った。静かに手すりをとって階段を上る姿は、セカセカ追い越す若者とは対照的に、ゆとりがありエレガンス。きれいなグリーンのスーツが「私らしく歩かせてくださいね」と語っていて見とれる瞬間だった。


















