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'06/12/05 夕刊掲載 
美登里のオフタイム

〜  39  〜

カバンの中の相棒

文具店で手帳コーナーがにぎわうようになると「年末なんだなぁ」と思う。さすがに1年通して使うものだけにみんな念入りにこだわりの手帳を選ぶわけで、そういう時につきあいのある会社から数種類の手帳をいただくと「もったいないなぁ」と思うのである。複数持つとトラブルの原因になるし、メモ代わりになるかといえばやたら罫線(けいせん)が多くて書きにくいし分厚すぎる。

 手帳の使い方にも個性が見られる。本当に大切なことしか書き込まない人。びっしり欄を埋め込まないと空白に不安を覚える人。赤や青や色を変えて細かくパズルのように書くのが好きな人。手のひらサイズ、弁当サイズ(笑)、ポケットページを増やし電卓、カード、日本地図、占い…ほとんど趣味と化したオプション好きな人。

 歴代のマネジャーの手帳は私にとってドラえもんだ。その黒い分厚い手帳の中には決定事項のほかに予定、原案、懸案、年間計画、さまざまな内容が書き込まれている。私から見るとどれも同じように見える文字も本人には色分けされたように映るのだろうか? 「あれ、何て書いたっけ〜?」慌ててメモした自分の文字が自分で読めなくて四苦八苦しているのもご愛きょう。1冊のくたびれた手帳から私の1年分の音楽や活動のすべてや将来の青写真が育つのかと思うと、他人の物とはいえ「おつかれさん」と感謝せずにはいられない。

 私はというと、ここ数年は小型のシステム手帳を使っているが、以前はキャラクターのイラストのついた手帳を使っていた。コンサートや打ち合わせなど重要な内容も、せっかくの連休の欄に仕事の予定を書き込む時も、ビニールの表紙のスヌーピー手帳に書くとちょっと気分が軽くなる気がして、その落差を楽しんでいた。いかにもという「頑張りますムード」が苦手なのだ。手帳を開くたびに「え?」というスタッフの顔が面白い。ちょっとまじめにやってくださいよー、いい年して子供っぽすぎますよー。確かに会社の営業マンだったらいっぺんで信用を失うかも(笑)。

 2つだけずっと入っているものがある。1つは四つ葉のクローバー。高校生の時にどこかで見つけて英和辞書にはさんでいたもの。嫌いな英語が好きになるようにのおまじないだった。もう1つは5年ほど前に仕事でオーストリアに行った時少年からもらったエーデルワイスの押し花。また外国に行けますように。

 毎年買い替える手帳は、現実を記録しているようで、本当は過去と未来に私を包みいつも一緒にいる、カバンの中の大切な相棒なんだと思う。

(辛島美登里=シンガー・ソングライター)
鹿児島市出身の辛島さんのエッセー。隔週火曜日に掲載します。
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