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'07/10/31 夕刊掲載 
美登里のオフタイム

〜  62  〜

素直にあやまろう

ボクシングの亀田親子のニュースを見ながら思い出したのだが、朝青龍がモンゴルでサッカーをしていたのは7月25日の真夏だった。有無を言わせぬ強さに誰もが認めざるを得なかった横綱力士だったのに、疲労骨折で夏巡業を休んだわりに故郷でサッカーに興じていたことがバレてからは、マンションに身を隠し口を閉ざしたまま、無精ひげ面でモンゴルへ帰っちゃったその言動に正直、「それが国技の頂点に立つ人間の振る舞いか? 情けない!」という気分になったものだが、あれからまだ3カ月ちょっとしかたってないのに、すっかり話題の軌道はズレてしまい、今や世の中は亀田家一色だ。

そのたった3カ月の間にも安倍晋三氏が代表質問の直前になって「(おなかが痛いし)もう辞〜めたッ」宣言したり、時津風部屋の事件に関する相撲協会の態度など、わだかまりの残る非常識な記者会見目白押しで、一体『謝罪する』ということは何なのか、その基本をどの人もわかっていない気がして、もし朝青龍が復帰したとしても「おかえり!」なんて単純に迎える気分などさらさらない私は、薄情者なのだろうか。

競争の激しい時代、勝者がいれば敗者も生まれる、それも摂理。けれど、勝者が輝かしい賞賛を浴びるのと同時に、敗者には『復活』のチャンスが与えられている。むしろ、周囲は勝者よりも敗者に注目しているかもしれない。なぜなら、成功者はひとにぎりだけど、不器用で心が弱く『負け』を経験したことのある人の方が世の中にはずっと多いからだ。潔く非を認め、孤独の沼からはい上がりやがて再生する様子に私たちは勇気づけられ、敗者は前よりも温かい応援を得ることだって可能なのだ。

「悪いことをしたと反省しているのなら、素直に謝りなさい」と、誰しも子供の時から親に言われて育ったはず。調子のいい私などは「口だけ『ごめんなさい』と言っても通じんよ。ちゃんと態度に表さんと」とも諭された。『ごめんなさい』は火事と同じ。早ければ早いほどダメージも小さくて済む。意地や見えを張ってるうちにやじ馬にどんどん囲まれて、関係ない場所にまで飛び火し、うわさは脚色され、原因はうやむやになり、人の災難を面白がる人たちの格好のイジメの餌食にすらなってしまう。

謝罪会見で家族を代表として現れた亀田興毅は、一目見て「反省しているな」とわかった。ネクタイを締め、ほぼ敬語を使い、視線をそらさず、家族をかばい、今の彼にできる精いっぱいの気持ちが伝わった。

「もういいでしょ、素直に謝ったんだし。そろそろ他の話題を探せば」記者団に向かってそう言いたくなった。

(辛島美登里=シンガー・ソングライター)

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