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'07/12/12 夕刊掲載 
美登里のオフタイム

〜  65  〜

ミキティ頑張れ!

スポーツにうとくてもフィギュアスケートは見てみたい、と思う女性は多いと思う。まず他のスポーツと比べ、『音楽』の果たす役割が大きい。シンクロナイズドスイミングも床演技にも音楽はあるが、フィギュアほどの存在感はない。トリノオリンピック金メダルの荒川静香がエキシビジョンで使った音楽『ユーレイズミーアップ』はその後日本でもヒットしたが、あの時の演技はスポーツの域を超えてバレエでも見るかのように気高く、アーティスティックだった。というわけで『フィギュアは女性を魅(ひ)きつけるスポーツ』と、私が思う理由は3つある。

1つ目は美しさ。日本選手のスタイルは本当に良くなった。筋肉質で短めの旧やまとなでしこの足は、ジャンプするごとに氷が割れるんじゃなかろうかと観客をハラハラさせたものだが、今や他国の選手の方がむしろたくましく、しなやかさでは日本選手の方が勝ることもある。趣向を凝らした衣装を見るのも楽しい。トップクラスの選手の衣装はシンプルな中にも華やかさとセンスが光り、対しどこかやぼったい衣装だなと感じればやはりそれは初出場の選手だったりするから、選手のオーラとはすごいものだと思う。

2つ目は強さ。どんなに女らしい演技をしようが、そのジャンプたるやスケート靴のエッジで氷を砕かんばかりのものすごい瞬発力と気合が必要だ。スピンひとつとっても高速回転の中、しゃがんだ体勢から徐々に背を伸ばし、まるでひな鳥がみるみる白鳥へと成長する過程を演じきるパワーは測り知れない。転倒し氷上に体をたたきつけられても、サッと気持ちを切り替え凜(りん)と立ち上がり、ひるむことなく次のジャンプにトライするひたむきな勇気。肉体的にも精神的にも強くなければ観客を感動させる演技などできないのだ、と教えられる。

3つ目はあこがれとジェラシー。競技を見る時「ジャンプが成功しますように!」と応援しながら心のどこかで「でももし失敗したらどうなるんだろう?」と想像する自分がいる。浅田真央のむきたまごみたいなほっぺに微笑(ほほえ)みながら、安藤美姫のやや憂いを帯びた表情や、あごのニキビにも共感を覚える。それらはまるで私自身いや、たぶん恋する女性そのものと思う。大胆かつ臆病、希望を持ったかと思えば自信をなくし、誰かにあこがれ同時に嫉妬(しっと)して…。NHK杯でカルメンを演じた安藤は大事なシーンでジャンプを失敗した。ミキティ頑張れ! トップの時より紆余(うよ)曲折する彼女に今、私は魅かれている。フィギュアスケートは女性の不思議な魅力をたくさん発見できるスポーツだと思う。

(辛島美登里=シンガー・ソングライター)

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