高隈山系の懐深く抱かれた猿ケ城渓谷。樹木の息吹あふれる森に溶け込むように八木酒造猿ケ城蒸溜所は立っている。昭和3(1928)年の創業だが、2代目のときに約30年の休業を余儀なくされ、3代目・八木栄寿社長が平成16(2004)年、再興に踏み切った。蔵発祥の地・垂水できれいな水と空気を探し求め、たどり着いたのが猿ケ城の山中だったという。
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| ▲思いはひとつ「うまい焼酎を造ること」 |
再興とはいえゼロからのスタート。手探りで突き進む栄寿さんが出会った力強い味方が、杜氏歴54年の吉行(よけ)正己さん。さまざまな有名銘柄を手掛けた笠沙杜氏の第一人者である。「週2日の約束だったのに、なぜか毎日ここに来ていた」と笑う吉行さんも、猿ケ城という最高の「仕事場」に魅了された。「これで完ぺきということは絶対ない。常に最高の焼酎を目指す」が信念の熟練杜氏とは、出会うべくして出会ったのだろう。
新しい蔵には、栄寿さんの息子たちも加わった。「不眠不休で頑張る親父(おやじ)の姿を見たら、放っておけなくて」。長男の健太郎さんは大学を辞めて、二男の大次郎さんは高校卒業後、蔵に入った。大次郎さんは吉行さんの一番弟子として、杜氏を目指している。
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| ▲猿ケ城山中にある工場 |
屋号は「八木」の○の中に八ではなく、「〓(マルキュウ、○の中に九)」。「いつもまだ一歩足りない、もう一歩頑張ろうという謙虚で前向きな気持ちでいよう」と2代目が付けたという。
製法は、総かめ壺(つぼ)仕込み。「うちのもろみは表情がきれいだと思います。もろみをどれだけかわいがれるかは私たちの努力。後は焼酎の神様の力」と栄寿さんは言う。
創業当時の銘柄を復刻した芋焼酎『八千代伝(白)』『八千代伝(黒)』、黄麹(こうじ)を使った華やかな風味の『千代吉』が代表銘柄。焼酎を愛してやまない男たちの夢と情熱、豊かな自然が絶妙な味わいを醸し出している。
(「てぃーたいむ」2008年2月号掲載)
info
所在地
垂水市新御堂字鍋ケ久保1332−5
電話
0994(32)8282
見学:午前9−午後5時(できれば事前に連絡を)
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