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 鹿児島県内各地から転入教職員の歓迎会の便りが届いている。ご当地料理のもてなしは、「カツオのびんた」で知られる枕崎市が始まりのようだ。

 古老によると、終戦から2、3年の頃、空襲に台風が追い打ちをかけた街に先生が赴任することになった。歓迎しようにも物資が乏しい。そんな折かつお節業者が「塩煮にすれば喜ぶ」と分けてくれたのがカツオの頭だった。

 初ガツオの季節である。作家の池波正太郎さんも好んで食べた。「味と映画の歳時記」(新潮社)に「鰹(かつお)の刺身ほど、初夏の匂いを運んでくれる魚はない」とある。そのカツオも近年は漁が振るわない。

 業を煮やした高知県はこの春、資源回復を目指し、産官学の「県民会議」を設立した。皆で知恵を絞ろうという算段だ。カツオは海外で缶詰用の引き合いが強く、熱帯域で各国の巻き網船がしのぎを削る。乱獲で日本周辺への回遊が減ったとすれば複雑である。

 南洋でも2月以降、急激な不漁で、冷凍カツオが高騰している。こちらもかつお節製造に響くので頭が痛い。近海の生鮮用といい、漁獲が好転しなければ日本の食文化は細りかねない。

 池波さんはカツオの刺し身にショウガをつけて口に運ぶとき、夏の訪れを感じたという。マグロやウナギのように規制の憂き目に遭うのか。食通で鳴らした作家が健在なら、昨今のカツオ事情にどんな筆を執るだろうか。