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 北朝鮮が鹿児島県内の拉致被害者らは「死亡した」と告げてから、今年の9月で15年になる。一報を受けた記者会見で被害者家族の増元照明さんは「信じるわけにはいかない」と目を見開いた。

 姉のるみ子さんが1978年、市川修一さんと共に吹上浜から連れ去られた。2人とも「死亡」とされたが、その根拠は乏しい。増元さんの一言は自らを奮い立たせるようだった。

 先日、都内であった集会で姉を思う弟の声は怒りに震えた。「拉致の問題で日本は怒らないから関心がなくなるのは当たり前でしょ」。早期救出を願って街頭に立ち、政府に働き掛け続けてきた。だが、助け出す糸口はおろか、安否さえつかめない。

 北朝鮮はこのところ相次いでミサイルを発射し、核実験の強行をちらつかせている。トランプ米大統領は先制攻撃も辞さない構えだ。核・ミサイル問題と拉致をひとくくりにして解決を図ろうとする日本外交の狙いは外れつつあるように見える。

 米朝対立が深まる中、北朝鮮高官が発言した。拉致被害者の再調査を約束した日朝合意は既に無くなった、誰も拉致に関心がない-。情報戦を仕掛けた可能性はあるが、神経をすり減らす家族はいたたまれない。

 「次の世代の子どもたちがどういう目に遭うか分からない」。横田めぐみさんの母早紀江さんの悲痛な訴えだ。家族の絆を断ち切る拉致は、ひとごとではない。