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 私事だが、義父の最期をみとった。家族が声を掛けても昭和7年生まれの85歳に意識は戻らず、そのまま逝ってしまった。時計を見ると、日付が「昭和の日」に替わってまもなくだった。

 日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳。「昭和ひとけた」といわれる世代が減っていく。子どもの頃に戦争を経験し、敗戦で社会の価値観が百八十度ひっくり返った。そして働き盛りとして戦後の復興を担った。

 そんな世代の顔に昨年7月に亡くなった大橋巨泉さんや永六輔さん、少し先に旅立った野坂昭如さんの顔を思い浮かべる人もおられよう。憎らしいほどアクが強く、ぶれない。根底には強い平和への願いがある。

 有名人に限らない。昭和の後半や平成しか知らない世代には思いも寄らない人生を、誰もが経験している。激動の歴史にぴたりと重なるそれぞれの昭和史がある。義父の歩みをたどりつつ、あらためてそう感じた。

 安倍晋三首相は憲法施行70年のきのう、2020年に新憲法の施行を目指す方針を示し、「私たちの世代のうちに」自衛隊を合憲化したいと述べた。戦争を体験した世代が減り、平和憲法の土台が揺らいではいないか。昭和という時代の記憶を、簡単には失いたくない。

 ゴールデンウイークで里帰りという人も多かろう。父や母、祖父母や曽祖父母が笑顔の奥に秘めた、身近な昭和史を尋ねてみてはどうだろうか。