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 人物や動植物をあしらったパイプや灰皿は、趣向を凝らしたつくりで見ていて飽きなかった。東京・墨田のたばこと塩の博物館が展示している年代物の数々は、まるで装飾品だ。

 思えば喫煙は単調な行為である。たばこは1600年ごろにヨーロッパから日本に伝わったとされる。キセルから紙巻きに主流が移っても煙を吸っては吐く、この動作は変わらない。酒を器で楽しむように、たばこを味わうのに小道具は役立ったのだろう。

 酒が苦手な人は飲まずにおけばいい話だが、相手が煙とあってはそうもいくまい。他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙である。国内では1980年代、当時の国鉄の利用客が嫌煙権を訴えて裁判を起こしたことで論争に火が付いた。

 今世紀に入ると、健康増進法の登場で駅や公共施設の禁煙は進んだが、世界的に見るとまだまだ遅れているという。中でもやり玉に挙がっているのが飲食店など屋内の煙である。

 厚生労働省は東京五輪・パラリンピックを控え、バーやスナックなどの小規模店を除いて原則禁煙とする方針だ。これには客が減るなどと自民党の一部が反発し、法改正は足踏み状態が続いている。

 飲食店の中には、分煙とは名ばかりのついたてを置いただけの店もある。さすがにたばこを吸う身にもはばかられる。たばこに甘い日本の情景は、過去の遺物として博物館に展示されかねない。