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 「中国と日本は一衣帯水の隣国だ」。大学時代の恩師である中国人教授がよく口にしていた。一筋の細い川や海を隔て、近い距離で向き合う様子を指す言葉だ。

 北朝鮮がおととい早朝、また弾道ミサイルを発射した。30分にわたって約800キロ飛行したことから新型のようだ。技術力は確実に向上しており、4000キロ離れたグアムまで射程に捉えた可能性もあるという。

 平壌と東京は直線距離で1300キロ足らず、鹿児島は930キロ余りしか離れていない。北の脅威は深刻さを増しており、高をくくっていられない。目と鼻の先で繰り返される蛮行に強い怒りを覚える。

 国際社会の警告もどこ吹く風である。中国のメンツも丸つぶれだ。ミサイルが発射されたのは、威信をかける経済圏構想「一帯一路」の国際会議が北京で始まる直前だった。「後見人」といえども、顔に泥を塗られては対話どころではないだろう。

 川向かいの民を見捨てることはできない-。もともと一衣帯水は、隋王朝を開いた文帝が長江を隔てた隣国・陳の悪政に憤り、討伐した故事にちなむ。陳の王は民の暮らしぶりに目を向けようとはしなかった。

 現代のかの国の指導者の姿と重なるようだ。膨大な軍事費をつぎ込むミサイル開発が続いては、人民の生活も厳しかろう。陳王朝は隋に滅ぼされ、南北朝時代は終わりを告げる。さて「金王朝」はどうなるのだろう。