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 歌舞伎役者の中村獅童さんが初期の肺腺がんであると公表した。現在44歳。絵本を題材にした新作に挑み、音楽制作ソフトを利用した仮想歌手の初音ミクとも共演する。精力的な活動を続けていただけに驚いた。

 がんは日本人の2人に1人が一生に一度は経験するといわれる身近な病気だ。医療の進歩で、通院治療をしながら長く付き合う人が増えている。獅童さんのような働き盛りも多い。

 だが、治療と仕事の両立は簡単ではない。会社から退職を勧められたり、周囲を気遣って辞職したりする人は少なくない。がんと明かして再就職先を探せば、面接すら断られるケースも多いと聞く。

 国も事態を重く見て、昨年改正したがん対策基本法で就労支援を促す。少しずつ企業も環境整備を始めた。そこに水を差したのが、自民党の大西英男衆院議員の「(がん患者は)働かなくていい」という発言だ。

 受動喫煙を巡る議論の中で「喫煙可能な店で働くことはないという趣旨だった」と弁明したが、がん経験者の厳しい現状をどれほど理解しているのか。折れそうな心を抱えながら、懸命に仕事を探す人たちを傷つける発言に憤りを覚える。

 獅童さんは「同じ病の人たちに、早く見つかるとこんなに元気になるんだと身をもって示したい」と意気盛んだ。挑戦し続ける姿は多くの人の励みになるに違いない。大西議員とはまさに役者が違う。