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 1匹の猫が2本の前脚を鉄柵に掛け、半身を乗り出すように遠くを見ている。パリに住む3歳のメス猫で、名をガゼットという。この愛らしいポーズが近所の評判だったらしい。

 写真展「岩合光昭の世界ネコ歩き」が鹿児島市の黎明館で開かれている。ポスターやチケットの猫といえば、ご存じの人もおられよう。薄緑色の瞳は何を見つめているのか。気になって仕方ない。

 開幕日のトークショーで岩合さんが秘密を明かした。「外をメス猫が通ると、この格好で眺めるんです」。視線の先を歩くのは同性も見とれる美しいパリジェンヌか、それとも恋のライバルか。豊かな表情が見る側の想像力をかき立てる。

 同じタイトルの番組がNHK・BSプレミアムで始まって5年になる。写真展には世界15地域の街角で撮った209点が並ぶ。どの国に行っても、岩合さんは「いい子だね。撮ってもいいかい」と日本語で語り掛け、シャッターを切る。

 同時開催の写真展「どうぶつ家族」の動物たちは力強い野生の魅力を放つ。一方、人と一緒でなければ生きていけない猫の表情や行動は、どこか人間くさい。写真から猫が暮らす街の空気や人々の暮らしぶりが伝わってくる。

 「冷たい街の風景は猫が加わるだけで温かくなり、色気が差してくる」と岩合さんは言う。人が幸せな街は、猫も幸せそうな顔をしている。私たちの街はどうだろう。