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 日南市沖を震源とする大きな地震が発生、5カ月後に霧島で巨大噴火が起き、国内がパニックに陥る―。石黒耀さんの「死都日本」(講談社)は緊迫感にあふれる。

 大火砕流で南九州全域は壊滅する。鹿児島県庁をひとのみにするシーンは衝撃的だ。小説の世界と侮れない。7300年前の三島村付近の鬼界カルデラ噴火で、薩摩半島や大隅半島は火砕流に襲われた。

 久しぶりに再読した。原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の科学的特性マップが公表されたからだ。日本地図に示されたオレンジ色に広がるエリアが目につく。火山や活断層があり、好ましくないとされた地域である。

 地震と火山の巣によくぞここまで原発を造ってきたものだ。核のごみは放射線が安全なレベルに下がるまで10万年かかるという。そんな厄介物で繁栄を享受してきた以上、今の世代が責任を持って保管場所を決めなければならない。

 とはいえ、言うはやすくである。誘致話は鹿児島でも浮上しては住民の反対で頓挫してきた。マップが公表されたからといって処分場の選定は一筋縄にはいくまい。

 「死都日本」では川内原発も火砕流に巻き込まれる。首相直轄の秘密作戦で燃料棒が事前に撤去され、最悪の事態は逃れる設定だ。では、処分場はどんな結末が待っているのか。10万年はとてつもない年月である。想像もできない。