( 8/4 付 )

 タイの塩焼きに一箸つけたところで殿様がお代わりを所望した。困った家来はちょうど満開の桜に目を向けさせ、その隙に塩焼きを裏返す。江戸小話の「桜鯛(だい)」である。

 こちらは、殿様が急場しのぎに走ったということか。安倍改造内閣が発足した。官房長官ら政権の骨格はそのままにして、力量不足の問題閣僚を一掃した。目指すは内閣支持率の回復だ。

 とはいえ、顔ぶれはフレッシュさに欠ける。19人の閣僚のうち3分の2を入れ替えながら初入閣は6人にとどまっている。「未来チャレンジ内閣」と名付けた1年前の威勢の良さはどこへやら、「安全運転型」の布陣を強いられた。

 首相の宿願は憲法改正に自民党総裁の3選だ。ところが稲田朋美元防衛相の後ろ盾として批判を浴びたばかりか、森友・加計学園問題で大きな打撃を受けた。浮き彫りになったのは「安倍1強」の弊害にほかならない。

 「政権奪還したときの原点にもう一度立ち返り、謙虚に丁寧に国民の負託に応える」。首相は会見で力を込めた。地方では景気回復の実感が乏しい。新たな看板政策という「人づくり革命」の行方はどうなるか、これまでの政策の焼き直しなら願い下げだ。

 「結果を残す」との言葉を信じていいのか。閣僚をすげ替えて人心を一新する。しかし国民は依然として厳しい目を向けている。これで数々の疑惑が帳消しになるわけではない。