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 すり犯罪取締本部の発足を伝える白黒写真が雑踏の靴音を連想させる。1964年の東京五輪の治安対策を振り返る企画展が、東京・京橋の警察博物館で開かれている。

 当時、「史上最大の警備」に延べ10万人を超す警察官を動員した。人力がものをいうのは今も同じだが、課題はすりからテロ防止に移ったようだ。「大規模なスポーツイベントは標的になる可能性がある」と展示パネルにあった。

 2020年の東京五輪開幕まで3年。そのテロ対策に欠かせないという触れ込みで登場したのが「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法である。一方で、捜査機関による乱用を招き、監視社会につながりはしないかとの懸念は根強い。

 1990年代初めの銃刀法改正が頭をよぎる。銃持参で自首した人の刑を軽くし、「平成の刀狩り」と言われた。全国の警察に専門部署がつくられ、押収量が一気に増えた。

 その陰で、他の犯罪に目をつぶる見返りに銃を出させたり、所有者不明と偽ったりする違法捜査まで行われた。「あと1丁で新記録だ」。北海道警の元警部が裁判で明かした上司の一言は、功名心が現場の良心をむしばんでいたことを物語る。

 成立の過程からして多くの疑問や不安を置き去りにした共謀罪法である。法の効果を証明するには実績が一番―。そうした風潮が捜査の行き過ぎを生むのは、今も昔も変わるまい。