政府は、英国系投資ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド」(TCI)に対し、電力卸最大手電源開発(Jパワー)株の買い増しを中止するよう命令した。
Jパワー株の9.9%を保有するTCIは最大20%までの追加取得を希望していた。しかし政府は、外資による買い増しは電気の安定供給や国の原子力政策に影響を与える恐れがあるとして中止を勧告していた。
命令はTCIが「審査手続きが不透明」と、勧告の受け入れを拒否したための措置である。政府が外為法に基づいて外資に株式取得の中止命令を出したのは初めてのことだが、制限する理由が明確に示されたとは言い難く、対立は深まろう。
TCIは行政不服審査法に基づき異議申し立てをすることができるが、命令は覆らない見通しだ。TCIがさらに不服な場合は、法廷闘争に持ち込む道も残されている。
TCIが強硬姿勢を強めるのは、社外取締役の導入や株式持ち合いの解消など一定の合理性のある株主提案を、Jパワーが拒否したことに端を発する。加えて、政府が外資による対日投資の促進をうたい、Jパワーも外国人投資家を増やしたいとしながら、権利行使を求める「もの言う」株主は排除したいという意向が見え隠れしているからである。
TCIはかつて、ドイツ証券取引所の大株主となり、ロンドン証券取引所の買収計画を投資に見合った利益が確保できないとして断念させている。政府の中止命令は、こうした投資姿勢が国のエネルギー政策に悪影響を与える可能性があるというだけの漠然とした判断による。一方のTCIは国の政策に反する株主提案はしないと明言していた。
Jパワーは、2004年に上場し完全民営化した時点で株主のものとなったはずである。今回のように特定の株主を排除しようという経営姿勢は、特殊法人としての意識が残っているからではないか。
株主の権利を重視する経営が世界の主流になりつつある中で、内向きの経営を続けていては日本市場の閉鎖性を疑われかねない。来月26日の株主総会に向け、Jパワーは早急に経営を見直す必要があろう。
政府も、TCIの買い増しを規制する明確な基準を示さなければ、海外投資家の理解を得ることはできまい。無用な規制は、国内投資家にとっても株主としての正当な権利の制限につながることを理解すべきだ。
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