[EU完全離脱へ] 英国内外の混乱抑えよ
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 「欧州単一市場にとどまることはできない」「欧州連合(EU)域内からの移民流入を制限する」

 EUとの離脱交渉を3月にも始める英国のメイ首相がEUから完全離脱する意向を示した。

 EU離脱を決めた昨年6月の国民投票の結果に伴う判断である。メイ氏は、英国を欧州だけに頼らない「真にグローバルな国にしたい」とも述べた。

 だが、完全離脱による英国内外の政治や経済への影響は計り知れない。原則2年とされるEUとの交渉も難航必至だ。

 メイ氏は、想定される混乱を最小限にとどめる対策に指導力を発揮してもらいたい。

 EUの単一市場は域内での人やモノ、サービス、資本の移動を原則自由とする。

 英国の離脱派は、この市場へのアクセス維持と移民制限の両方を交渉で勝ち取る算段だった。

 これに対し、EUは移動の自由が単一市場参加の条件だとする原則を崩さなかった。英国の「いいとこ取り」は許さないとの姿勢でEUとしては当然だろう。

 メイ氏の方針は単一市場への残留より、EU離脱によって移民を管理する権限など主権を取り戻すことを優先したものだ。

 ただEUの単一市場は英国を除く加盟27カ国でも人口約4億5000万人を抱える。域内総生産(GDP)の規模は米国に迫る。加盟国間は関税もない。

 その市場を中心に、英国の貿易総額のほぼ半分は欧州が占めている。EU離脱はそうした利益を失うことになりかねない。

 英国に進出している日本企業も影響は避けられない。

 現地生産したEU向け日本車への課税や、金融機関が英国で取得し、域内どこでも通用する営業免許の失効の恐れなどだ。

 メイ氏はそれらを回避するためEUとの間で、自動車や金融など個別の貿易協定を結びたい考えも表明した。

 しかし、EU側は一歩も引かない構えだ。ドイツやフランスなど主要国で年内に大統領選挙や総選挙が予定され、交渉の内容次第では、他国でも離脱を模索する動きが予想されるからである。

 加えて、気掛かりなのはトランプ米次期大統領の言動だ。

 トランプ氏は英紙でEUの移民政策をけなす一方、英国のEU離脱は「賢い選択」とたたえた。

 移民や難民を英国やドイツなどEUが受け入れなければ、彼らはどうなっていたのか。

 トランプ氏がいくら移民嫌いだとしても、EU内の反目をあおるような発言は慎むべきである。