[拉致家族会20年] 活動継続に向け支援を
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 「娘のことは片時も忘れない。私たちがあきらめたら終わり、と家族同士励まし合って生きてきました」

 1978(昭和53)年8月、市川修一さんとともに、日置市の吹上浜で北朝鮮工作員に拉致された増元るみ子さんの父正一さん(故人)の言葉である。

 理不尽な国家犯罪に巻き込まれた娘を案じ、一日千秋の思いで再会を待ち続けてきた親の情愛が伝わってくる。

 北朝鮮による拉致被害者家族会が結成から20年を迎えた。全国で暮らす肉親同士をつなぐ組織として国内外で活動してきた。

 だが、日朝交渉の停滞で問題解決の先行きは見通せず、被害者の親世代の高齢化が進む中で今後の活動継続に不安を抱えている。

 日本政府は、北朝鮮政策について「対話と圧力」という基本方針を堅持するが、事態打開に向けてあらゆる施策を駆使すべきだ。

 家族会は97年、8家族で発足した。横田めぐみさんの父滋さんが2007年まで代表を務め、現在は田口八重子さんの兄の飯塚繁雄さんが代表だ。

 拉致問題を巡って大きな動きがあったのは02年である。当時の小泉純一郎首相が初訪朝した際、金正日総書記が拉致を認め、蓮池薫さん、曽我ひとみさんら被害者5人が帰国した。

 しかし、横田めぐみさんら日本政府が認定する未帰国の拉致被害者は12人いる。

 先日、東京であった特別集会では「今年中に全被害者救出を」と初めて帰国の期限を設け、政府に求めた。

 その背景には、解決がさらに長引けば、活動できる人が減ってしまうとの危機感があろう。政府は真摯(しんし)に受け止めてもらいたい。

 安倍政権は拉致問題を「最優先課題」としている。だが、北朝鮮との対話再開の糸口は見いだせていない。

 北朝鮮の金正恩体制が急速に進めている核・ミサイル開発阻止のため、圧力強化を優先する必要があるからだ。

 軍事力行使も含め、対北朝鮮政策を見直しているトランプ政権とも歩調を合わせている。

 政府は昨年9~11月に少なくとも3回、中国で北朝鮮側と非公式に接触したとされる。拉致解決に向けて対話の機会を探っているのは間違いなかろう。粘り強い交渉が求められる。

 家族会は、北朝鮮への姿勢で時に内部で路線対立してきた。それでも活動を続けてきたのは肉親を取り戻すという固い信念があったからだ。幅広い支援が必要だ。