[福島避難解除] 安心して帰れる古里に
( 4/2 付 )

 東京電力福島第1原発事故で福島県浪江、川俣、富岡の3町と飯舘村に出ていた避難指示の一部が解除された。

 4町村の対象住民は計約1万2000世帯、約3万2000人に上る。住み慣れた地域に戻れる人が増えるのは意義あることだ。

 一方、住民の帰還が順調に進むかは見通せない。放射線への不安は根強く、暮らしや医療を支えるインフラの復旧は十分とは言い難いからだ。

 避難指示解除は復興へ向けたスタートにすぎない。政府は住民の心情と要望に耳を傾け、安心して帰れる古里づくりを行わなければならない。

 福島原発事故に伴う避難区域は2013年に再編され、放射線量が高い順に「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」に分かれている。

 政府は15年に「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」の避難指示を17年3月末までに解除する方針を打ち出した。避難先に定住する人が増え、このままでは戻る人がどんどん減ってしまうという危機感がうかがえる。

 今回の解除で、残る避難区域は約370平方キロとなり、当初の3分の1にまで縮小された。

 だが、若い世代を中心に帰郷をためらう実態もある。先に解除された市町村で帰還した人は、13.5%にとどまる。

 復興庁が昨年実施した住民意向調査では、原発に比較的近い浪江、富岡両町で5割以上が「戻らないと決めている」と回答した。30代以下は7割前後に上る。

 「原発への不安」や「商業施設が元に戻りそうにない」ことなどが主な理由だ。住民たちが感じている幅広い懸念は当然だろう。

 各地の住民説明会でも、買い物や医療などの生活インフラを心配する声が何度も上がった。それでも「帰還ありき」で推し進める政府の姿勢には疑問を感じる。

 7市町村に残る「帰還困難区域」の再建も課題である。

 政府は「特定復興拠点」を市町村ごとに設けて除染などを集中的に進め、5年後をめどに避難指示を解除する方針だ。

 拠点の範囲などは未定で、依然として戻れない人との分断が、住民の亀裂を広げる可能性もある。

 政府は「自主避難者」への住宅無償提供も3月末で打ち切った。

 古里に帰る人、帰らないと決めた人、帰れない人。そのいずれも、原発事故が起きたがための苦しみと悩みを抱えている。

 東電と、国策で原発を推進してきた国は、すべての被災者へ息の長い支援を続ける責任がある。