[諫早湾干拓判決] 国は当事者責任果たせ
( 4/18 付 )

 国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡って、干拓地営農者らが国を相手に潮受け堤防排水門の開門差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁は国に開門しないように命じた。

 開門することによって農業用の調整池に海水が入り、農作物に塩害が起こるという営農者側の主張が認められた。

 だが、この判決で問題が解決するとは考えにくい。これまで司法の場で「開門命令」と「開門禁止」の相反する判断が出ており、今回もその一つにすぎないからだ。

 堤防の閉め切りから今月で20年になる。漁業者は漁場の復活へ開門を求め、営農者は塩害を懸念して開門に反対する。主張は真っ向から対立し、膠着(こうちゃく)状態が続く。

 混乱を収めるには、国が主導して双方が折り合える着地点を見いだすしかない。事業を推進した当事者として当然の責務である。

 諫早湾干拓事業は、農地確保と災害対策を目的に事業化された。全長約7キロの潮受け堤防で湾を閉め切って約670ヘクタールの農地を造成した総事業費は、約2530億円に及んだ。

 1997年、堤防の大型鋼板が次々に落とされる様子は「ギロチン」に例えられて注目を集めた。

 堤防閉め切り後の2000年、有明湾特産のノリが記録的な不作に見舞われ、その後も赤潮が頻発するようになった。タイラギやアサリといった貝類も激減した。漁業者らは干拓事業による潮流の変化が原因と主張し、開門を求める訴訟が始まった。

 結果として生じたのが、開門の訴えを認めた福岡高裁の確定判決と、営農者側に沿う長崎地裁の開門差し止め仮処分が並立する前代未聞の状況である。

 今回は開門差し止めが認められたが、関連訴訟はほかにも福岡高裁などで6件が係争中で法廷闘争は複雑化、長期化するばかりだ。

 排水門は閉ざされたままなので、国は最高裁の「間接強制」の決定に従って漁業者側に制裁金を払い続けなければならない。仮に開門すれば、支払先が営農者側に代わるだけだ。

 見過ごせないのは、制裁金を払うことで問題を先送りしている国の姿勢だ。納税者の意に沿った公金の使われ方とは到底思えない。

 地域を豊かにするはずの公共事業が住民を分断し、先の見えない法廷での争いが続く。国は失政の責任を直視すべきだ。

 山本有二農相は「一つ一つもつれた糸を解くように丁寧な対応をしたい」と述べている。努力宣言に終わらないよう、政治的な解決に向けた具体的な行動が厳しく問われている。