[共謀罪衆院通過] 論点棚上げは許されぬ
( 5/24 付 )

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案がきのうの衆院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決された。

 先週の衆院法務委員会に続き、民進党などの反対を押し切った採決の強行だ。政府、与党はテロ対策に不可欠と訴えており、今国会での成立を目指している。

 法案は憲法が保障する国民の思想、信条の自由に多大な影響を及ぼしかねない。一般人が捜査対象になるか否かなど線引きはあいまいで、数多くの論点は棚上げされたままだ。

 法案の衆院通過で審議の舞台は参院に移るが、「成立ありき」で強引に突き進むことは容認できない。

 法案は犯罪が行われなくても、計画段階で処罰する。捜査機関による恣意的な運用で監視対象が飛躍的に広がり、反原発など市民運動にも及ぶ恐れが指摘される。

 法案への反対集会が、鹿児島など全国各地で開かれている。国民の疑念や不安は世論調査の結果からみても明白だ。

 共同通信社による直近の全国電話世論調査では、政府の説明が十分だと思わないとの回答が77.2%に達した。国会審議で法案の理解が進むどころか、民意は置き去りにされた格好だ。

 地方議会も相次いで法案の撤回や慎重な対応を求める意見書を可決し、住民の声を代弁している。

 南種子町議会は「法案はえん罪を生み出す元凶になりうる」などとして、政府に慎重審議を求める意見書を全会一致で可決した。

 法案が成立すれば、国家による一方的な監視社会が始まるとの懸念は根強い。

 国民主権を支える「知る権利」は空洞化しつつある。2014年施行の特定秘密保護法は防衛、外交など安全保障に関し重要と認定された情報を厳重に保全する。

 一方で情報公開制度は深刻な問題を抱えている。個人情報や国の安全、外交上の不利益になる情報は非公開という例外規定を悪用するケースが増えているからだ。

 森友学園問題では提出された文書がほとんど黒塗りで「のり弁」と批判された。獣医学部新設計画を巡る加計学園問題でも情報公開に後ろ向きの姿勢がありありだ。

 自分たちに都合の悪い情報は公開しない。こうした政権や行政が国民への監視を強める権限を握ったらどうなるか。他の権利も軽んじられることは想像がつく。

 今回の法改正では国民一人一人がわが身に起こり得る問題として考えることが大切だ。