[日印原子力協定] 非核政策損なわないか
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 インドへの原発輸出を可能にする日印原子力協定承認案が衆院を通過し、協定は締結・発効の見通しとなった。

 核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドに対し、核物質や原子力関連技術の移転を可能にするものだ。

 核実験再開や軍事転用への懸念は拭えず、不十分な協定内容と言わざるを得ない。日本政府が主張するように、本当に平和利用に限定できるのか。疑問は置き去りにされたままである。

 原発ビジネスを優先し、これまで堅持してきた非核政策を損なうようなことがあれば、国際社会の日本への信頼は大きく揺らぐことを忘れてはならない。

 インドは1974年と98年に核実験を実施し、国際社会から原子力協定を禁じられていた。2008年の外相声明で核実験モラトリアム(一時停止)継続を表明。欧米諸国はインドへの原発輸出を可能とする協定を締結した。

 日本も10年から交渉を開始、昨年11月にインドのモディ首相が来日して両国が協定に署名した。

 日本側は、インドが核実験を行った場合は協力を打ち切ることを協定に明記するよう主張した。だが、インド側の抵抗で協定本文ではなく、別文書でその趣旨を確認するにとどまった。

 これで実効的な歯止めとなるのか、懸念は消えない。

 さらに国会では、核爆発を伴わない臨界前核実験をインドが行ったら協定を終了させるのかという質問も出た。だが、政府は「適切に対応する」と繰り返すばかりで、協力の停止を明言しなかった。

 これでは、仮に臨界前核実験が確認されても、日本が協定破棄に踏み切る確証はもてない。

 唯一の被爆国として核廃絶・不拡散を訴えてきた日本の立場とは相いれない。そればかりか、北朝鮮の核実験を強く批判している基本姿勢とも整合性はとれない。

 安倍政権は成長戦略の一環として原発輸出を進めてきた。

 しかし、東京電力福島第1原発事故後、世界で安全対策が強化され、原発の建設費の増加を理由にした工事の遅れも目立つ。

 日本の官民一体の売り込みで受注が決まっていたベトナムは昨年、財政難などを理由に原発計画を白紙撤回した。米国では、東芝が買収した米原発会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が巨額赤字を出し、今年3月末に連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。

 現実性に乏しい原発輸出に固執するより、日本が掲げてきた非核政策を再確認するべきだ。