[「共謀罪」採決] 良識の府の自殺行為だ
( 6/15 付 )

 審議時間が20時間にも満たない段階での異例の強硬手段である。あまりにも乱暴な国会運営だ。

 国会が大詰めを迎える中、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を巡り、与党は参院法務委員会での採決を省略する「中間報告」に踏み切った。

 中間報告は法務委での審議を途中で打ち切り、本会議への報告を求める手続きである。委員会での採決を省いて一気に本会議で採決するのが狙いだ。

 国会法では「特に必要があるときは中間報告を求めることができる」と規定されているが、あくまで非常手段だ。議会制民主主義の否定につながる「禁じ手」との批判が強い。

 共謀罪法案は、監視社会を招く恐れがあるなど多くの疑問が積み残されている。徹底審議が求められているのに、審議を省いていい理由はどこにもない。

 こうした中間報告による法案処理は、「良識の府」を名乗る参院の自殺行為である。与党の行為は到底認められない。

 自民、公明両党は当初、15日の参院法務委で法案を採決し、週内の参院本会議で成立させるシナリオを描いていた。

 だが、この方針を突然、変更した。背景に透けるのは、安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人加計学園を巡る問題だ。

 野党は国会答弁が不安定な金田勝年法相の問責決議案だけでなく、文部科学相の不信任決議案や内閣不信任決議案などを次々に提出した。

 野党の攻勢にさらされる首相周辺は、加計学園問題でこれ以上の追及を避けたいのが本音だ。共謀罪法案の採決が遅れ、国会会期を延長すれば「何が起きるか分からない」(政府高官)と身構えていた。

 公明党にとっても、委員会採決のない中間報告は好都合だったろう。参院法務委員会の委員長は党所属議員だ。採決強行を巡る混乱がクローズアップされると、東京都議選を控える党への打撃になるからである。

 中間報告について野党は「究極の強行採決」「前代未聞の暴挙」と反発したのは当然である。

 安倍政権は中間報告に関し昨年12月にも、カジノ法案を巡って実施を検討した前例がある。当時は実施を見送ったものの、数の力でごり押しする1強政権の体質があらわになっている。

 共謀罪法案を巡って国民の疑問や懸念に真正面から答えようとしない。政権与党による熟議を欠いた強引な国会運営はおよそ容認できない。