[「共謀罪」法施行] 運用に目を光らさねば
( 7/12 付 )

 本格的な監視社会の入り口に立っているといえよう。「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法がきのう施行された。

 犯罪を実行に移した段階で処罰してきた刑事法体系を大きく転換し、犯罪の計画段階で捜査機関の取り締まり対象とする。

 政府は、2020年の東京五輪・パラリンピックを控え「テロ対策に必要であり、国際条約を締結するのに欠かせない」と主張してきた。

 これに対し、野党は「条約の目的はマフィアなどの経済的犯罪だ」とし、政府の主張にはごまかしがあると反論している。

 法案への数々の疑念を残したまま参院は採決を強行した。国会の自殺行為との批判はやまない。 最大の懸念は捜査権の乱用だ。内心に踏み込み、プライバシー侵害につながらないか、法の運用に目を光らせたい。条文のあいまいな部分の修正も必要だ。

 適用されるのは、犯罪の実行を目的につながっているテロ集団や暴力団などの「組織的犯罪集団」だ。対象犯罪は277に及ぶ。

 犯罪を計画したメンバーら2人以上のうち少なくとも1人が現場の下見などの「準備行為」をすれば、全員が処罰される。

 しかし、額面通りには受け取れない。

 「組織的犯罪集団」や「準備行為」の定義について政府の説明は二転三転した。とりわけ金田勝年法相は意味不明な答弁が目立ち、法案への疑念を深めた責任は極めて重いと言わざるを得ない。

 テロ対策については、野党は既存の法体系で十分に対応できると訴えてきたが、政府は聞く耳を持たなかった。

 一般人は対象にならないとしてきた政府の説明も説得力に欠ける。というのも、捜査対象を最初から絞り込むのは難しく、広く一般人も対象になるのは明らかだ。

 そうした声があるのは、これまでも警察は秘密裏に任意捜査の幅を広げたり、個人情報を集めてきたからである。

 衛星利用測位システム(GPS)端末を使った捜査について、最高裁は今年3月「令状なしは違法」と判断した。それまで野放しだったことが分かる。

 政府にとって都合の悪い団体を監視するために使う恐れもある。沖縄の反基地活動や反原発の市民グループなどだ。

 電話やメールなど対象犯罪拡大への通信傍受の懸念も捨てきれない。捜査の暴走にどう歯止めをかけるのか。公訴権を有する検察のチェックや令状を発付する裁判所の厳格な判断が求められる。