[首相と憲法改正] 「謙虚と丁寧」忘れるな
( 8/5 付 )

 安倍晋三首相は内閣改造後の記者会見で、自身が掲げた改正憲法の2020年施行目標や秋の臨時国会での自民党改憲案提示について「スケジュールありきではない」と、固執しない考えを示した。

 事実上の改憲日程先送りの表明である。

 会見では経済最優先の方針を強調し、「謙虚に丁寧に国民の負託に応える」と述べた。

 だが、憲法改正は首相の悲願だ。任期中の改憲を目指す姿勢は変えていない。支持率が回復すれば再び前のめりになる可能性もある。

 憲法改正については、自民党の新執行部からも拙速を避けるべき、との意見が相次いでいる。

 首相はまず「改憲ありき」を脱すべきではないか。国民世論や党内の意見に耳を傾け、自らの言葉通り、「謙虚に丁寧に」議論を進めてもらいたい。

 首相が憲法改正の目標に大きく踏み込んだのは、5月3日の改憲派集会に寄せたビデオメッセージだった。9条を維持したうえで自衛隊の存在を明記する加憲案を示し、東京五輪が開かれる20年の施行を目指すというものだ。

 6月には講演会で、秋の臨時国会に自民党の憲法改正案を提示すると表明した。

 しかし、学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画や南スーダン国連平和維持活動(PKO)日報隠蔽(いんぺい)問題を巡る疑念などから内閣支持率は急落。東京都議選では惨敗の結果を招いた。

 首相の主導権が揺らぐなか、賛否の分かれる改憲への意欲を前面に掲げ続けることは、得策ではないと判断したのだろう。

 自民党新執行部役員の就任会見では憲法改正を巡り、二階俊博幹事長が「慎重の上にも慎重に、国民の意見を承る」と注意深く進める姿勢を示した。岸田文雄政調会長も「まずは自民党内での丁寧な議論が重要だ」と強調した。

 こうした党内の慎重論も、首相の発言を後退させたとみられる。

 自民党は首相の20年改憲施行発言を受けて、党憲法改正推進本部の議論を行ってきた。

 9条と教育無償化、緊急事態条項の新設、参院選の「合区」解消の4項目がテーマだ。そこで明らかになったのは、12年に決めた自民党改憲草案との整合性や教育無償化の財源論など、異論や課題の多さである。

 内閣改造後の支持率は共同通信社の世論調査で8.6ポイント上昇したが、政治不信は依然根強い。首相は国民の信頼を取り戻すためにも改憲手続きを「数の力」で押し切るような政治手法とは決別しなければならない。