[柏崎原発合格へ] 規制行政の信頼揺らぐ
( 9/8 付 )

 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働審査を巡り、原子力規制委員会は事実上の合格証に当たる審査書案を了承する方針を決めた。

 2基は福島第1原発と同じ沸騰水型原子炉で、事故を起こした東電の原発が審査に合格する見通しとなったのは初めてだ。

 規制委はこれまで東電の原発事業者としての適格性を疑問視してきた。ところが、6日の定例会合で「第1原発事故の経験はプラスになる」と評価するなど姿勢を一転させた。

 再稼働に向け、安全のお墨付きを与える重大な方針転換である。背景には田中俊一委員長が今月中旬の退任を控え、任期中に審査の道筋をつけたいとする強い意向があるという。

 規制委の審査は技術的な専門知識をベースにあくまで厳格で公正であるべきだ。だが、これとは無関係に個人の意向が優先すれば、規制行政の信頼が揺らぐと言わざるを得ない。

 「福島第1原発の廃炉に主体的に取り組む覚悟と実績を示せない事業者に再稼働の資格はない」

 田中氏は7月の規制委臨時会議で、川村隆東電会長ら経営陣にこう迫った。8月にも原発の安全確保などに主体的に取り組めるか意見を聴取した。

 柏崎刈羽6、7号機は2013年9月に審査申請された。第1原発事故の教訓を踏まえ、設備の安全対策や、社内の安全文化が厳しく問われることはうなずける。

 ただこの間、東電が事故や被災者に正面から向き合ってきたかは疑わしい。

 今年2月には、柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性不足を把握しながら規制委に報告しなかった問題が発覚。隠蔽(いんぺい)体質の根深さをあらためて浮き彫りにした。

 第1原発で増え続ける汚染水対策については喫緊の課題にもかかわらず、具体的な解決策を示すことができなかった。何より第1原発の廃炉作業は収束のめどが立たないままだ。

 一連の東電の対応を受け、規制委が合否判断を留保してきたのは当然だろう。それなのに、ここにきて再稼働容認へかじを切るのは不可解というほかない。

 田中氏は方針転換との批判について「(これまでの発言の)言葉尻を捉えている」と反論する。だが、従来の発言と整合性を欠いているのは明らかだ。議論を尽くさないまま、拙速な判断といわれても仕方なかろう。

 東電への国民の目は依然厳しい。規制委は、東電を信任したことへの説明責任を果たすべきだ。