[原発避難者訴訟] 国の責任追及すべきだ
( 9/24 付 )

 東京電力福島第1原発事故で、福島県から千葉県に避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟の判決で千葉地裁は、東電に対して自主避難の4人を含む17世帯42人に計約3億7600万円を支払うよう命じた。

 事故前の生活を丸ごと壊された「ふるさと喪失」の苦しみを賠償対象として認めたもので、一定の前進といえよう。

 一方で、国の賠償責任は認定せず、国と東電双方に責任があるとした3月の前橋地裁判決とは判断が分かれた。

 巨大津波の発生を予見できたとしながら、対策の優先度が低かったことなどを理由に違法性を否定した今回の判決は納得しがたい。日本の原発は「国策民営」で進められてきた。国の責任を追及し、被災者の救済拡充を急ぐべきだ。

 主な争点は、国と東電が巨大津波を予見し、事故を防げたかという点である。

 千葉地裁は判決理由で、国と東電は政府の地震調査研究推進本部による長期評価(2002年公表)を基に、遅くとも06年までに約10メートルの原発敷地高を超す巨大津波の発生を予見できたとした。

 ただ、国と原子力事業者の資金と人材には限りがあり、津波対策は優先度が低かったと指摘。仮に対策を取ったとしても、時間的に間に合わないか、事故を回避できなかった可能性があるとした。

 だが、原発事故がもたらす被害の大きさを考えれば、資金の制約などを理由に対策を先送りすることが許されるとは思えない。

 前橋地裁判決が「国は規制権限を行使すれば事故を防げたのにしなかった」と厳しく指摘したのとは対照的だ。

 ふるさと喪失の慰謝料は、地域コミュニティーなどを失ったことによる精神的苦痛は、国の指針に基づく賠償では補いきれないと認めたものである。

 弁護団によると、原告のうち3世帯の子どもが小中学校のときに「放射能が来た」と言われるなどのいじめに遭ったという。平穏な生活が崩れ、ストレスなどから健康を損なった住民も多い。

 「金額が低すぎる」という声もあるが、「ふるさと喪失」が賠償の対象になると踏み込んだことは、今後の同種の裁判への大きな問題提起にもなる。

 原発事故避難者らによる集団訴訟は全国各地で約30件起こされている。10月10日には福島地裁で原告数約3800人という最大規模の訴訟の判決がある。

 被災者の苦悩と向き合い、国を含めた事故の責任を明確にする判決が下されるか注目したい。