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'07/06/30 本紙掲載 
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自立遠く

巨大水車

100万人観光の夢空回り

 薩摩川内市祁答院町藺牟田の山あいで、巨大な木造水車がゆっくり回っている。所々がこけむした水車の周囲は人気もなくひっそり。「ザーッ、ザーッ」と小川の水を吐き出す音だけが響く。隣の小屋にある粉ひき器は壊れていた。
 水車が造られたのは1991年だ。「年間100万人の観光客を呼び込もう」という大きな夢が託されていた。直径13メートルの大きさは完成時は日本一で、その名も「世界一郷水車」。手がけた旧祁答院町は過疎地域自立活性化優良事例として当時の国土庁長官賞を受けた。
 しかし客足は思うように伸びずじまい。同町自体も04年の市町村合併で薩摩川内市の一部になった。自立にかけた夢は空回りした。

■危機感を背に
山あいで回り続ける世界一郷水車。自立への夢はかなわなかった=23日、薩摩川内市祁答院町藺牟田

 「児童の減少で地域の活力が低下し、税収も落ち込んだ。何か手を打たないと町の存続も難しいとの危機感があった」
 水車づくりを発案した当時の町長、朝隈峯雄さん(89)は振り返る。旧祁答院町は55年、周辺3村による昭和の大合併で誕生。人口は1万人余をピークに高度成長期を経た88年、約5000人まで半減した。
 水車に目を付けたのは県外で人気という情報が発端だ。美しい山村風景をアピールする格好の観光素材に映った。建設費の5000万円は町と県が折半した。
 これと前後して近くの藺牟田池との一体的な観光地づくりが進められた。そうめん流しの町営施設をはじめ池を一周する町道(約3.5キロ)を整備。町営住宅を増築するなど定住促進にも力を入れた。
 ところが頼みの水車効果は一過性で長続きしなかった。同市によると、約40万人だった観光客は完成の翌年度、60万人に増えたが、数年で下火になり今は30万人台。ヒマワリ畑を広げたりホタルを増やしたりする景観づくりの取り組みも根付かなかった。

■季節限定

 一帯がにぎわうのは花見シーズンや涼を求める夏場ぐらいだ。近くの自営業米積英昭さん(65)は「珍しさだけを追いすぎた。季節限定が多く、時期が過ぎれば価値がなくなる。活用するにも難しい」。
 当時、地域おこし団体代表の立場で観光地づくりに携わった地元出身の薩摩川内市議、大田黒博さん(53)は自戒を込めて語る。
 「水車には多くの町民が賛成し、活性化への夢をかけた。今となっては箱物頼みは通用しないと痛感する。豊かな自然を生かしたソフト事業や人材育成を優先すべきだった」
 旧祁答院町は合併後も人口減が続き、現在4400人。朝隈さんは知人が訪れると、決まって水車見物に連れ出す。
 「小さな町が注目を集めるには次々に話題を提供する必要があった。最善の策だったとの思いに変わりないが、誰にも見られず回り続ける水車を見るのはつらい」
 過疎は都市の過密と表裏一体だ。その構造を問わない限り、地方だけの努力では自ずと限界がつきまとう。

故郷 かごしま地域再生

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