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'07/10/16 本紙掲載 
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新米記者の現場−第60回新聞週間に考える


■遺族取材

「当事者に聞く」が原点

警察官が慌ただしく動き回る事件現場。真相に迫るには、当事者らへの取材が大切だ
 穏やかな表情の男性の遺影。線香を手に取る。背中に視線を感じる。手の震えが止まらず、うまく火を付けられなかった。
 殺人事件の被害者の親族に話を聞くため、先輩記者と実家を訪ねた。「南日本新聞です。線香をあげさせてください」。葬儀を終え集まっていた20人ほどの親族の中で、1人だけ普段着の女性に許可をもらい、土間から上がった。
 警察取材では分からない事件の真相を知るため、遺族の取材が必要なのは分かっていた。だが、気は重かった。「非常識だ」とののしられはしないか。不安と緊張でいっぱいだった。
 「なぜこのようなことが起こったのでしょうね」と先輩記者が切り出す。視線が一斉に集まった。1人の男性が「私たちも何が原因だったのか知りたい」とぽつりぽつりと語った。突然降りかかった悲劇に戸惑う遺族の姿が痛々しかった。
 先輩記者は慎重に言葉を選び、質問を重ねる。聞きたいこと、聞かなければならないことはたくさんあった。だが、口を開くことはできなかった。隣に正座して聞くだけが精いっぱいだった。
 被害者の母親も取材に応じてくれた。声をかけて分かったことだが、家に招き入れてくれた普段着の女性だった。
 数日間、連絡が取れずおかしいと思い家を訪ねたこと、遺体を発見したときの状況など淡々と話してくれた。逆に、口ぶりから「わが子の死」というショックの大きさがひしひしと伝わってきた。
 「こんな時だからもう遠慮してください」と親族に促された。手をついて非礼をわび実家を後にした。その間わずか10分余り。足がしびれ、とても長く感じられた。
 母親や親族から聞いた話は、翌日の紙面で短い記事になった。遺族の心情だけでなく、被害者の事件直前の暮らしぶりも盛り込むことができた。
 事件事故の取材は警察情報が出発点になることが大半だ。だが、そこだけにとどまっていては見えないこと、分からないことが多い。現場、当事者への取材の大切さを痛感した。
 入社前、新聞記者の仕事は記事を書くことと信じていた。そこに至る取材の奥深さにまでは思いが及ばなかった。わずか半年の経験だが、一番大事なのは人に会い、話を聞くことだと思う。
 ただ、憔悴(しょうすい)する事件の被害者や関係者、いきり立つ事故の当事者らを前に、勇気が鈍ることもある。何のために人と会うのか。その原点を忘れず、多くの声を拾いたい。
(社会部・桐野秀吾=入社1年)
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