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'07/10/21 本紙掲載 
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新米記者の現場−第60回新聞週間に考える


■鹿児島都市圏

“息づかい”伝える技を

児童の通学を34年見守り続け、“定年”を迎えた男性。今後も地域の物語を伝えていきたい=9月3日、鹿児島市草牟田2丁目
 「昭和の天文館」の象徴ともいえるエンパイヤビルが解体される−。鹿児島市を主な取材範囲にする地域報道部に6月末、そんな情報が飛び込んできた。
 ビルは天文館の中心部に位置し、南九州一の繁華街の再開発という意味でも関心は高い。「新しいビルに飲食店が入り、通りが再びにぎやかになれば」。近くの飲食店主は天文館の“再興”に期待した。その言葉に、早く記事にしたいとの思いは募った。
 ところが、交渉中を理由に、取材相手からは「まだ話せる段階ではない」と断られ続けた。せっつくのは相手に悪い気がした。話をしてくれるまで待てばいい、と安易な気持ちになっていた。
 記事にできたのは1カ月余り後。既に解体のうわさは広まっていた。「もうニュースじゃない」と先輩。情報をつかんだら、即座に紙面で伝えるという結果が問われる仕事の重さを痛感した。
 一方で、名刺1枚でいろんな人と出会える新聞記者稼業の楽しさもかみしめている。
 「おはようございます」。午前7時半、子どもたちが元気よくあいさつして横断歩道を渡っていった。児童通学保護員の男性に笑みが広がる。夏休みを終えて戻った朝の光景。何だか胸が弾んだ。
 9月の2学期初日、鹿児島市草牟田小学校区で34年間、通学保護員を続けてきた男性を取材した。70歳を迎え、保護員としてはこの日が“定年”の日。「子どもたちの笑顔に支えられた」。最後の児童を見送った横断歩道で、満足そうにうなずいた。
 取材の発端は市から届いた1枚のファクス。永年勤続の保護員に感謝状を贈るという。先輩に「頑張っている人がいるんじゃないか。市に問い合わせてみたら」と言われ、取材できた人だった。
 同じ取材では、交通事故で右脚を切断しながら11年間、錫山小校区で保護員を務める男性(54)とも出会った。車が行き交う道沿いに松葉づえで立ちながら、「子どもたちに同じようなつらい経験をしてほしくない」と語る声が重く響いた。同時に、先輩の助言を重くかみしめた。あの一言がなければ、記事で紹介できなかっただろう。
 この仕事を目指したのは、「いろいろな人と出会い、表舞台に表れない活動に光を当てたい」との思いから。記者になって1年5カ月たったが、まだまだ自分の力で発掘することができていない。先輩や同僚と比べ、自分の非力さに焦る気持ちもある。
 鹿児島市は人口約60万人。人も街も、いろいろな物語を持っている。街を歩き、話を聞き、その息づかいまで伝えられるようになりたい。
(地域報道部・右田雄二=2006年入社)
=おわり=
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