精神障害とともに
共生社会 探る旅へ
 精神障害者が増えている。
 国は2011年、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4大疾病に新たに「精神疾患」を加え、5大疾病として対策を強化している。
 14年の全国調査で、精神疾患患者は392万人を超えた。
 5大疾病の中で最も多く、今や国民病とも言える。
 精神疾患には、統合失調症、うつ病やそううつ病といった気分障害、アルコールなどの依存症、てんかん、認知症が含まれる。中でも職場でのうつ病や高齢化に伴う認知症が増加している。
 日本は欧米諸国と比べ、精神科のベッド数が多く入院期間が長い。地域で患者を支える体制整備が遅れていることが背景にある。
 国は04年、「入院医療中心から地域生活中心へ」の流れを加速させる改革ビジョンを打ち出したが、長期入院患者らの退院はなかなか進まない。
精神疾患を抱える人が増えている(鹿児島市内にある精神科の診療所から)
 精神科のベッド数は1950年代から70年代にかけて飛躍的に増えた。国が民間の精神科病院の設置を後押ししたためで、患者の隔離、収容が進んだ。
 そうした国の施策は正しかったのか。
 入院に大きく依存する精神医療について、ハンセン病問題のように国の責任を問う国家賠償請求訴訟を起こそうという動きもある。
 そんな国内にあって、人口に対するベッド数、入院患者数、20年以上の長期入院患者数が最も多いのが、鹿児島だ。
 2013年時点で、20年以上の入院患者は1320人に上った。はるかに人口の多い東京が1401人、大阪が1296人であることからも、鹿児島の多さが分かる。
 昨年の県の調べによると、県内の入院患者約700人が地域の受け入れ条件が整えば退院できる。
 入院だけでなく外来患者も含む、県内の精神疾患患者は、14年で5万4000人に上る。わずか15年で倍増している。
 最も多いのは統合失調症の1万7000人だ。気分障害が1万2000人、認知症1万1000人と続く。
 精神疾患は4人に1人は一生に一度経験するとされる身近な病気だ。
 誰しも精神障害者になる可能性がある。もしそうなっても、地域で暮らせる、働く場所を得られる共生社会づくりが求められている。
 今年4月、役所や事業者に対し障害を理由とした差別的な取り扱いを禁じた障害者差別解消法が施行された。
 再来年の18年には、精神障害者の雇用を促す改正障害者雇用促進法が施行される。
 しかし、われわれは今、精神障害のことをどれだけ理解しているだろうか。
 南日本新聞は、来年にかけて精神障害を考えるシリーズ連載企画「精神障害とともに」を展開する。
◇企画取材班へのメール=seishin@373news.com

第1部
闇と光の日々
 精神障害者や家族はこれまでどんな苦しみを味わい、何に希望を見いだしているのか。さまざまな声に寄り添う。
※この連載は1回目のみ全文を掲載します。
“心の病”/息子自死、後悔今も 2016/09/20
自死遺族/語り合い心癒やす 2016/09/21
発症/幻聴に振り回され 2016/09/22
再生/職場や親の支えで 2016/09/23
長期入院/22年鉄格子の中に 2016/09/24
社会復帰/短歌で生きる喜び 2016/09/25
断酒40年/依存症と闘い続け 2016/09/26
家族の願い/病気へ理解広がれ 2016/09/27

第2部
精神科 密着 240時間
 鹿児島県内にある二つの精神科病院に9月に計10日、24時間密着取材した。姶良病院と、病床が486で県内最多のメンタルホスピタル鹿児島(鹿児島市)。南日本新聞シリーズ企画「精神障害とともに」第2部は、二つの病院を通して精神科病院の今をリポートする。
※この連載は1回目のみ全文を掲載します。
保護入院/患者説得1時間 2016/10/18
救急病棟/手厚い人員で対応 2016/10/19
看護/難しさとやりがい 2016/10/20
施設介護困難/認知症の受け皿に 2016/10/21
身体拘束/高齢化で増加懸念 2016/10/22
電気けいれん療法/麻酔かけ負担軽減 2016/10/23
治療多様化/作業、心理面も重視 2016/10/24
精神鑑定/総合力で重責担う 2016/10/25
医療観察法病棟/再犯防ぐ治療徹底 2016/10/26
10 超長期入院/失われる生活能力 2016/10/27
11 退院の壁/家族と関係こじれ 2016/10/28
12 ピアサポーター/入院経験から助言 2016/10/29
13 隣接地に退院/地域移行は道半ば 2016/10/30
14 変わる施設/明るく開放的空間 2016/10/31
15 変容/在宅サービス強化 2016/11/01

第3部
100年の記憶
 精神障害者の処遇が初めて法制化されたのは、1900(明治33)年制定の精神病者監護法だ。家族らに障害者の監督義務を負わせた。以来100年余り、当事者、家族は地域社会にこびりついた偏見、差別にさいなまれてきた。鹿児島の医療関係者や当事者、県外の識者らを訪ね、精神医療の「100年の記憶」をたどる。
※この連載は1回目のみ全文を掲載します。
提訴の動き/隔離 国賠で問う 2016/11/29
私宅監置/「不幸な」劣悪環境 2016/11/30
県内初病院/治療以外の理由も 2016/12/01
ブーム/民間の病院が激増 2016/12/02
収容/官民挙げ「全国一」 2016/12/03
荒療治/後遺症重く姿消す 2016/12/04
患者作業/病院の労働力担う 2016/12/05
続いた虐待/人権重視の契機に 2016/12/06
地域への一歩/福祉遅れ家族補う 2016/12/07
10 新世紀/地域社会で共生へ 2016/12/08

第4部
地域の中で
 精神障害者の地域移行が少しずつ進んでいる。地域の中で、前向きに生きる当事者や、支援に奮闘する人々がいる。県内外の現場を歩いた。
※この連載は1回目のみ全文を掲載します。
長期入院越え/訓練に励み自立生活 2017/02/03
受け皿作り/病院辞め情熱注ぐ 2017/02/04
元入院患者/住民と交流「幸せ」 2017/02/05
退院支援/保健所主導で推進 2017/02/06
原動力/ピアが退院後押し 2017/02/07
住居確保/民間の活動に限界 2017/02/08
サービス過疎/島生活に負担重く 2017/02/09
訪問型診療所/1年かけ受診説得 2017/02/10
多職種/生活全般サポート 2017/02/11
10 第二の人生/訪問支援の充実へ 2017/02/12