'06/08/26 本紙掲載
「米軍再編‐その狙い」来鹿の梅林宏道さんに聞く

アジア・太平洋地域の平和運動家で、平和問題民間シンクタンク「ピースデポ」代表の梅林宏道さん(68)=横浜市=が15日、「不戦を誓う日」集会(鹿児島県憲法を守る会など主催)での講演のため鹿児島市を訪れた。講演とインタビューから「米軍再編−その狙い」についてまとめた。
このことは、米軍再編の日米協議で最も重要な2005年10月29日の合意文書の名前が示している。それは「日米同盟 未来のための変革と再編」というもので、「変革」と訳された「トランスフォーメーション」という英語は「根本的な変化」を意味する語だ。つまり米軍再編とは、日米同盟をこれまでとは全く違うものにする、ということだ。 この合意文書はマスコミでは「中間報告」と呼ばれた。日本政府が合意の重要性を押し隠すために「中間」という語を使ったからだろう。 日米同盟が全く違うものになるとはどういうことか。それは、米国防次官が04年に米下院で証言した「再編五原則」に示されている。 一つは「同盟国の役割を強化する」だ。同盟国が米軍を受け入れるのは、その国にとっても利益なのだということを納得させ、役割を積極的に担う存在になってもらうことを追求するのだ。 同盟国が米軍と一緒に行動する能力をもっていない場合には、米国の考え方にそって軍の教育や軍備強化を支援し、世界情勢や対処の仕方についての共通認識を確立するために情報の提供・共有を図るという。 日米安保条約によって米国に守ってもらうような日本から、米国の戦略的な考え方を理解し、日米の軍事的な一体化を自ら担い行動するような日本にするということだ。 米側はしばしば「日本国憲法九条は日米同盟の妨げ」とか「日本が集団的自衛権の行使を禁じているのは日米同盟の束縛だ」と発言してきた。これは、憲法や安保条約という戦後日本の法体系や日本社会の軍事アレルギーを変えなければ、米軍再編を有効に進めることができないという米側の認識を示している。 さらに国防次官が示した原則には「地域内のみならず地域を超えた役割を持たせる」ということと「迅速に展開する能力を発展させる」というものもある。 基地はそこで戦う場所ではなく、出掛けていくための拠点であり、米軍は同盟国の承認と支援のもとに、世界のどこへでも跳躍することができる「地球軍」でなければならないということだ。 このような考え方に沿って日米協議が進んだ。その経過は十分に公開されず、段階を追った説明もなかった。日米同盟の在り方について国民レベルできちんと論議されなかったのは、国民主権の点から大きな問題だ。 ともかく、今年5月1日に日米は最終合意した。それにより、(1)自衛隊と在日米軍の司令部の統合(2)米本土防衛のために世界中に構築されるミサイル防衛網の日本の分担(3)在日米軍訓練地域を日本全土の自衛隊基地に拡大(4)逆に自衛隊訓練の米軍基地への乗り入れ−が確実に進む。自衛隊を随時、海外に派遣するための法制定もなされよう。 日米安保条約は、在日米軍の任務を「日本国の施政の下にある領域」での共同防衛と規定(五条)し、日本の領域外に展開する場合は極東条項(六条)で「日本国の安全と極東の平和および安全に維持に寄与するため」と目的を限定している。さらに交換公文では、米軍が日本の基地から領域外への戦闘に参加する場合の「事前協議」を定めている。いずれも憲法九条の制約があるための取り決めだ。現在でもこれらの制約は事実上無視されてはいるが、今回の米軍再編は、このような日米安保の制約を根本から崩すものだ。 私たちは、軍事力で相手をしのぐという考え方に立つのではなく、国際的な制度によって平和への道を築くべきだろう。その際、いろいろ問題があるとしても、日本がまだ保持している非核三原則、武器禁輸三原則、専守防衛などの貴重な“財産”を使い、国際世論に訴えることが大事だ。その平和力を発揮するのは市民と自治体だ。 (聞き手・構成 編集委員・杉原洋)
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