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'07/09/01 本紙掲載 
参院選報道に関する南日本新聞の報道や、若年層の新聞離れについて意見を交わす第19回「読者と報道」委員会=8月23日、鹿児島市の南日本新聞会館

参院選報道
「保守王国」に違和感 大嵩氏
国会のあり方追及を 朝日氏
若者の本音引き出せ 山崎氏

 大嵩文雄委員 選挙は与党惨敗の結果に終わった。これは二大政党化を進めるべきという有権者の強い意思表示だと受け取った。報道された選挙に対する関心度調査では、9割が関心を示したが、実際の投票率は約60%に終わり、政党政治そのものに対する不信感の表れかもしれない。
 紙面では、各党のマニフェストやテーマごとの論評など、有権者に多くの指針を与え、密度の高いきめ細かな対応だったと思うが、ジャーナリズムの観点から見ると、多少の疑問点もあった。
 まず報道の視点。今回有権者の投票の決め手は、生活に密着した年金と格差の問題だったのは確か。しかし、議員の任期中には憲法改正の発議が予想され、今選挙は将来の国の方向を見極める極めて大事な選挙だった。多くの国民が、今後の日本と米国の関係など不安や疑問、怖さを持っているが、そういう視点からの記事が総体的に不足していたのではないか。日本のあるべき姿を問う姿勢が希薄だと感じた。
 多くの選挙区では自民現職が敗れ、与野党逆転となったが、鹿児島選挙区はわずかの差で自民候補が競り勝った。記者座談会の「逆風かわし保守王国死守」の見出し、連載「激震 保守王国 07参院選かごしま」のタイトルに一瞬戸惑った。
 鹿児島は農業県であり、これまで自民党に大きく依存してきた側面はあると思う。しかし全国で反自民の流れがうず巻く中、自ら「保守王国」と断定する表現を使う必要はなかったのではないか。うがった見方をすると、県民は先取性に乏しいとも取れ、自虐的な雰囲気さえ感じられた。

 朝日吉太郎委員 安倍政権は参院選大敗の原因を、政治路線そのものに対する有権者の不信任とは見ずに、官僚や閣僚の属人的理由から発生した偶発的な逆風現象とみている。この感覚は国民感覚とかけ離れており、不信感はますます大きくなるばかりだ。国民がどういった転換を求めたのかがはっきり示されていないという現状には、メディアにも責任の一端があるのではないか。
 紙面には、国民の必要とする課題を検討し投票の判断材料となる争点提起が求められた。鹿児島選挙区の3候補者への項目別アンケートは面白かった。また、政策討論などで各候補、政党が考える方向性について、中身を分析し報道しようとする姿勢がみられたことは評価できる。
 不足していたのは、選挙以前の国会の民主主義に対する報道だ。最近の国会では強行採決がひんぱんに起こっており、この状況は「言論に対するテロ状態」と言っていい。しかしメディアはそれに慣れてしまっているのではないか。言論の自由を守るべきメディアは、一度の強行採決も許してはならないと考える。
 連載「選択の視点」は、地方財政や憲法、農政など地元からとらえた問題点が示されており、興味を引いた。候補者アンケートなどで示された各政策を突き合わせて各問題点を判断していけば、今までと違った選択ができるのではないかと感じた。選挙期間中は無理かもしれないが、南日本新聞としての考えを独自にまとめることができれば面白いのではないか。

 山崎美智子委員 年金問題や政治とカネといった参院選の課題は、小泉政権の積み残し課題そのものだった。小泉政権を継承しようとしている安倍首相に対し、国民が明確な拒否反応を示したのが今回の選挙結果だ。
 戦争の悲惨さを知らない安倍首相が、戦争を認める憲法にしようとしている−という指摘がある中、連載「選択の視点」では、憲法問題の論戦が年金問題の影響で起きそうにないと指摘した。このほか、教育改革や子育て支援問題など、年金問題の影に隠れた、争点となるべき課題をえぐり出そうとする報道姿勢には好感が持てた。
 連載「無党派世代」は興味深く読んだ。政党アレルギーのある無党派層の存在などが、本音を交えたリアルな表現で書かれており、投票率が思うように上がらないといった状況の原因が、少しずつ浮き彫りになってきたのでは、と感じた。
 この連載で、県内の大学生でつくる「学生投票率100%をめざす会」が紹介されていたが、メンバーに本音を語ってもらう紙上座談会ができれば、若い人への訴えとして有効だったのでは。
 候補者アンケートは分かりやすかった。項目ごとにまとめられており、争点をはっきり理解することができたと思う。
 選挙中の安倍首相の発言を、社会言語学の観点からとらえ、敗因を分析した記事が面白かった。こういった文化的視点を、政治をみる視点として取り入れることも、政治を身近にする手法の一つなのではないか。

 木脇良知政経部長 今回の参院選は、安倍政権発足から初の国政選挙であるという点を念頭に、(1)正確な当確の判定(2)有権者に対し多面的で効果的な判断材料となる争点の提示−を基本方針とした。今回は特に都市部との財政格差など、鹿児島から見た政策課題に力を入れ取り上げた。また、選挙区の各候補者を集め、それぞれの政策や政治信条を述べてもらい幅広く紹介する試みにも取り組んだ。

 小田裕徳社会部長 政経部と共同で連載記事に取り組んだほか、公示後は過疎地の実情や高齢者医療、雇用問題など、生活密着の視点から、連日関連記事を掲載した。指摘のあった学生・若者の紙上座談会など、今後の報道に生かしていく。

 浜畑剛編集局長 今回の参院選報道は政策紹介を重視して臨んだが、厳しい指摘をもらった。読者からみるとまだまだ踏み込みが足らないという点もよくわかった。自己満足という面もあったかもしれない。真摯(しんし)に受け止めて紙面に生かしていく。

参院選の開票風景=7月29日、鹿児島市の鴨池ドーム
 安倍政権に対し国民の初審判となった参院選は、7月29日に投開票が行われた。鹿児島県内の投票率は60.67%で2004年の前回選挙より2.20ポイント下回った。
 年金記録不備、政治とカネの問題など、安倍晋三首相と自民党に対する強烈な逆風が全国で吹き荒れ、自民は多くの選挙区で議席を失い惨敗。3人が立候補した鹿児島選挙区(改選数1)でも、自民と民主候補が最後まで接戦を繰り広げたが、自民候補が辛勝した。
 南日本新聞では5月末から選挙区情勢を伝える特集記事の掲載を始めた。各党や立候補予定者の動きなどを随時伝えるとともに、6月中旬には「選択の視点−参院選かごしま」を連載、鹿児島の視点からの争点掘り起こしに努めた。無党派層の動きに焦点を当てた「無党派世代−かごしま参院選」も連載した。
 公示直前には立候補予定者を集め「政策を聞く会」を開催、政策を直接聞いて記事化した。7月12日の公示後は、項目別に候補者アンケートの結果を連載、投票の判断材料となる情報の提供に力を入れた。

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