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'07/12/11 本紙掲載 
地域医療
安心材料取り上げて 山崎氏
分かりやすい提案を 大嵩氏
財政面分析しっかり 朝日氏

 山崎委員 読めば読むほど、鹿児島県の離島・へき地医療の現状は大変だと感じた。高齢者問題と過疎化問題と相まって、ますます「住みにくい鹿児島」という印象である。同じ鹿児島県内でも医師数の地域格差が3倍もあり、医師自体は増えていても偏在していると伝えている。産婦人科休診問題で後任医が決まったという記事は、勇気が出る記事だった。同時に、少子化傾向の中の産婦人科医の鹿児島市の現状はどうなのかも知りたいし、離島に赴任した医師の今後も見守ってほしい。
 産婦人科や小児科をはじめとする鹿児島県が抱える多くの医療課題についての現状の厳しさはよく伝わってきたが、このような書き方が継続されると、一方ではとても不安をかき立てられるところがあるのは否めない。このような課題の多い鹿児島の医療に対して、行政側の「支援体制を強化する」という姿勢があるのだから、新聞としてはぜひ丁寧にフォローしてほしいと思う。課題は多いけれども、具体的に解決策を見出す方向に向かっていることを知ることができれば安心感がでる。
 担い手の確保では、他県の例とともに鹿児島大学の離島実習の取り組みも紹介されていた。奨学金制度や医学部への定員増などの具体的な情報を待ちたい。現実に対応しなければならない立場に皆いるわけであって、地域医療についても安心を与える材料があれば、勇気づくと思った。

 大嵩委員 鹿児島の医療の情報は、連載シリーズや単発の記事で、非常に丹念に取材されていて敬意を表したい。しかし、読者として医療体制や現状は知り得ても「その後」が分からない。「じゃあどうすればいいの」という読後感がやっぱり残ってしまう。
 疑問点を3点具体的に挙げると、1番目はシステム上のこと。国、地方自治体、病院・診療所、三者の関連性がよくわからない。2番目は改善策。大学病院の医局制度や医学部の定員拡大、またはへき地への医師派遣制度が指摘されているが、本当に積極的に行われているのかが分からない。3番目は社会背景。女性の社会進出、母子家庭の増加、核家族化などと決して無縁ではないはず。少子化の中で子どもが夜中に発熱すると、夜間救急に駆け込んでしまう。勤務医は昼間から働いているにもかかわらず、徹夜を強いられる。この悪循環をどうしたら断ち切れるのかが分からない。
 さらに、難しい医療用語は図解などを多用して分かりやすく書いてほしい。そしてもっと明るい展望の記事と提言提案など道しるべがほしい。

 朝日委員 南日本新聞は、地域の医療問題を詳しく書き込んできた。確かに「鹿児島の医療問題は大変」ということは十分伝わったが、以下にこういうことをしてもらえないかというお願い、注文をしたい。
 第1は「グローバルな視点で日本の医療を検証してほしい」。日本の医療行政は、グローバルスタンダードからみて劣悪だ。この背景には財政問題から医師養成を削減、制限してきた政府の政策がある。つまり医師不足は人為的に作られてきた。それなら人為的に変えることができると読者に伝える必要がある。
 第2は「医療と金の問題を明らかにしてほしい」。財政問題という閉塞(へいそく)感があるが、大企業に甘く庶民に辛い政治の中で起こっており、財政政策を変えれば医療問題は解決することになる。そういう基本方向を示せば、明るくなると思う。
 3つ目は「地域の医師確保の障害要因とは一体何かをしっかり分析してほしい」。医師確保問題では「学生や医師は都会を好むもの」という最初からの結論があるように思われる。しかし、地方に就職しようと思う学生もいるわけで、「条件さえそろえば行ける」ということがあるかもしれない。そこを分析できれば提言につながる。
 4つ目は「鹿児島の特殊性を踏まえて、医療費削減を検討してほしい」。鹿児島県は医療費が高額だが、高齢者や単身世帯が多いので、自宅療養が適切な解決策とは言い切れない。離島やへき地の存在、農村の疲弊は、地域での療養介護を困難にして、本土や都市部の病院で療養を延長せざるを得ないのではないか。そのあたりを検証した上で、医療費削減をどうするか報道してほしい。
 5番目は明るい話題ということで、「地域医療解決に向けた取り組みをもっと紹介してほしい」。いろいろな突破口はあるのではないか。そういう報道を期待したい。

 小田裕徳社会部長 この問題は解決への突破口がなかなかみつからないのが現状だと思う。地方に行くと医療の問題はかなり深刻で、交通の便などで通院すら思うようにできず、リハビリもできないような厳しい現状がある。その中で地域医療の企画は、地方に赴任した記者が、地域医療の現状に驚いて、自発的に「やりたい」とまとめたのが始まりだった。これからも暗さだけが強調されるような記事にならないように配慮しながら、問題点を細かく取り上げていきたい。

 杉原洋報道本部長 県都・鹿児島市のまちづくり報道では、指摘があったように「商圏の変動」と「まちづくり」とは直接つながらないテーマだが、それをどう立体的にとらえるかというところで十分でなかった。まちづくりの主体は行政や各種団体ではない。あくまで市民が主体だがその点での問題提起が弱いという反省がある。
 地域医療の問題は、国家制度にかかわっている。そこをどう地方から打開できるのかが問われる。医局の崩壊では、大学、医療機関、住民と連携したパワーを作らないと打開できないと思う。そのために私たちがどうするのかを考えていきたい。

 浜畑剛編集局長 私たちが考えているのは、地域に根ざしたまちづくりであり、足元にあるものをもう一回見直してみようということ。近く特集を組んで読者に投げかけてみたい。
  医療について「明るい展望を」という考えにはまったく賛成。記者がどんどん現場を回れば、そういった展望、話題も生まれると思う。

種子島の産婦人科休診問題で、後任医師(中央)が決まり、会見する地元自治体、県医師会関係者ら=8月24日、鹿児島市の県医師会館
 5月、種子島で唯一の産婦人科医院が、年内での産科取り扱い中止を表明した。産婦人科医が同医院の医師1人であることや緊急時の島外搬送体制など、出産時の安全性が保てないことが理由だった。
 地元1市2町は対策協議会を開き、県医師会や県に産科医確保を陳情。8月にようやく後任医師が決まり、当面は市立医院として運営する。
 県立薩南病院は7月から小児科を休診。また「鹿屋方式」と呼ばれる小児の当番制休日・夜間救急医療も医師不足で崩壊の危機に陥っている。
 これらの背景には、県内基幹病院に医師を派遣してきた鹿児島大医学部自体の医師不足がある。この“大学医局崩壊”は2004年からの「卒後臨床研修制度」に端を発する。新人医師に2年間の研修を義務づけたが、研修先を自由に選ぶ方式のため、都市部大病院や有名大学への医師流出が顕著になった。
 南日本新聞は種子島の産科医空白問題を発生から医師確保まで逐次報道。その間、7月には「地域医療はいま かごしま医師不足」を連載し、県内の産科や小児科、大学医局の現状を訴えた。

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