2014/05/14 本紙掲載 

避難の足もと

住民説明会/計画の粗さ浮き彫り
川内原発を考える  4月下旬、出水市高尾野であった県と市による避難計画の住民説明会。夕食時に雨が重なったが、約百人が出席し女性も目立った。渋谷俊彦市長は冒頭のあいさつで「皆さんの意見を反映させ、精度の高い計画に仕上げたい」と述べた。
 出水市は原発から半径5~30キロ圏の緊急時防護措置準備区域(UPZ)に2万2000人が暮らす。放射線のリスクを抑えるための屋内退避や避難、甲状腺被ばくを抑える安定ヨウ素剤の服用準備-。住民に心構えが求められる地域の一つだ。
 出水市の担当者は、避難は原則自治会単位とした上で、伊佐市や霧島市など避難先への複数のルートを紹介。「放射性物質は五感で感じられない。不安だと思うが、冷静沈着に」と呼び掛けた。
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 説明は約1時間に及んだ。難解な専門用語や横文字に戸惑う表情が見られたが、熱心にメモを取る姿は少なくなかった。ただ、質疑応答に移ると計画の実効性に不安を募らせる様子が見て取れた。
出水市高尾野であった避難計画説明会。女性の姿が目立った=4月25日夜
 男性「避難完了目標は何時間か。渋滞ならトイレにも行けないが、対策は」
 県「シミュレーションを精査中。資料をまとめて公表したい」
 男性「それを踏まえて初めて避難計画ができるのではないか」
 市「避難先を知ってもらうことも大事。基本的なものを示した」
 男性「それでは単なる机上論だ」
 会場はざわめいた。
 別の男性「風で避難先へ放射性物質が流れたら、計画は役に立たない」
 県「避難先で汚染の数値が出た場合、新たな避難先を県で調整して提示することはあり得ると思う」
 数回の質疑を経て、進行役が「そろそろ最後の質問を」と切りだした。女性が手を挙げ、落ち着いた口調で言った。「大事な説明会なのに質疑を20分で切るのですか。質問がなくなるまでやってほしい」
 遠慮がちな拍手が会場に響いた。説明会は予定の1時間を55分オーバーした。
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 説明会の後、取材に応じた会社員女性(20)は知人と顔を見合わせた。「今まで原発のことを真剣に考えてこなかったけど、事故の場合に助かるのか、避難計画を知って怖くなった」。説明会を聞いて不安になるとは、皮肉な結果だ。
 県は昨年3月、原子力規制委員会の指針に沿って、原子力災害対策重点区域を10キロから30キロに拡大させた。対象となる9市町には早めの避難計画策定を求めた。
 いずれの市町も昨年末までに仕上げたが、駆け足の作業だった側面は否めない。
 出水市では計4回の説明会を通し、要援護者の把握不足や、自治会班ごとのきめ細かな避難計画の必要性が浮き彫りになった。これらは他の自治体にも共通する課題だ。
 出水市安全安心推進課の志水靖博係長は「住民の不安は当然」と理解を示す。「県のシミュレーション結果も踏まえ、さまざまな想定の避難を考えたい」