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目玉はモダマを追っていた…~奄美マングローブ探検~

author: 春野 洋治郎(更新日:2012年6月14日)

マングローブ

うっそうと生い茂るマングローブ林は、まさに「探検する」と表現するのがふさわしい【写真提供/奄美市】

マングローブマンはスゴイぜぇ

「いちずに激しく恋い慕う」「切ないまでに思いを寄せる」ことを、“焦がれる”という。奄美群島へ旅してみると、まさにこの焦がれ状態におちいってしまう。移動している時にちらっと目に入ってきたなんでもない民家のたたずまい、街中で出会った看板にも、媚薬のようなものが塗り込められていて、旅を終えてわが家でくつろいでいると、その薬がジワジワ効いてきて、焦がれ状態へと達するのである。

さて、今回の旅の目的は、奄美大島の名瀬市住用町のマングローブ探検である。今から14~15年前、私は仕事でマングローブの密林を歩き回ったことがある。潮が満ちているとカヌーを漕いでヒルギが繁茂する密林を、潮が引くとベチャベチャドロドロの干潟を長靴履きで歩いた。そのベチャベチャドロドロの記憶が今もずっと心の中に残っていて、もう一度行きたいという焦がれ状態におちいってしまったのだ。

あの時の探検は、マングローブの近くで生まれ育った生粋のマングローブマンが先導してくれた。マングローブマンは小柄だが、がっしりとした筋肉質で眼光鋭く、実に機敏だった。手には深い傷跡があり、「ハブに2度も咬みつかれてなあ」と、微笑みながら語ってくれた。マングローブマンは、ズボズボ足をとられてしまう干潟を、実に軽快に移動していった。ハブや刃金のようなハサミを振り上げる巨大なマングローブガニ(通称ガザミ)、手の平の大きさはあるヒルギシジミ、体長3メートル余りの巨大ウツボ…おどろおどろしいものが蠢(うごめ)く世界が、実にスリリングであった。




奄美の海と空

「痛い」ほど照りつける太陽の光が、自然をより色濃く映し出す。海も山も空も、色の濃度がちょっと違う【撮影/犬塚 政志】

奄美の太陽は、痛い!

梅雨が明けた奄美の灼熱の太陽の下で、ひとつ大きく深呼吸をした。バス停横のハイビスカスがニコッとほほ笑んだ、気がしたが、そんなことはない、か。古仁屋行きのバスに乗り込んだ。名瀬の市街地を出るとトンネルを抜け、ブロッコリーが群生したような奄美の山々をグネグネと登り、住用へと下っていく。左手に見えてきた、迫ってきた、招き寄せている住用湾。「マングローブパーク前」でバスを降りると、オオ~ッと叫びたかったが、以前とは若干趣が異なる。まあ、旅は世に連れ、世は旅に連れ、である。

カヌーへ乗り込んだ。スイィッと川面に滑り出し、あとはギクシャクしたパドルさばきで、マングローブの森へと向かう。亜熱帯の灼熱の光がふりそそぎ、肌がジリジリ痛い。暑いでもなく、熱いでもない、痛いのだ、奄美の太陽は。この皮膚感覚も媚薬のひとつで、家に帰ってから焦がれ状態を引き起こすのである。

気分まかせ、パドルまかせ、ヒルギが群生するジャングルを漕ぎまくる。ルリカケスだろうか、あまり声質の良くないギャーギャー系の鳥の鳴き声が聞こえてくる。干潟に行儀よく繁茂したオヒルギやメヒルギを見ていると、彼等の不思議を思わざるを得ない。彼等は川の淡水と海の塩水のどちらにも適応できるのだ。ウナギは川海両用だと思うのだが、自力でどちらかへ移動できるのに、ヒルギ類は移動できないから川と海に弄ばれるまんまである。

中洲が現れて、ここでいったん上陸。奥に足を入れると、オオ~ッ過去の記憶がフラッシュバックしてきた。薄暗い密林の中にただよう怪しげな雰囲気。密林をしばし歩き回った、が、ハブもガザミも姿を現さない。太陽ジリジリの炎天下に、ハブがこんにちは、なんてないでしょう。ガザミだって穴の中で避暑の最中かもしれない。




マングローブ林をカヌーで進む

慣れないパドルさばきでヒルギのトンネルを進む。この秘境感に、また“焦がれ”が募るだろう【写真提供/奄美市】

漕ぎまくること3時間、そして…

ヨシ、出ないなら出ないでよろしい。(本音を言えば、ハブとはお近づきになりたくない)カヌーに戻る。私の頭の中には、ジャックと豆の木の絵本が広がっていた。絵本に出てくるでっかい豆の木が、ここ住用のマングローブパーク近くにあるという。モダマというサヤの長さが1メートルもの大きさだから、豆が10個入っていたとしても1個の大きさは10センチだ。これを前回見ずじまいだったので、今回はなんとしても見てみたい。

このモダマ、最初はマングローブの中にあるものだと思っていた。ところが、ネットで調べたら山の中に自生しているらしいことがわかった。三太郎峠近くの山の中らしい。極めてアバウトな情報で、三太郎峠近くまで行く足もない。奄美の友人に電話する。すると、山に入らなくてもマングローブの中にある、今すぐ案内するから待ってろと。

昼食をとって友人を待った。その間、マングローブパーク内の川のトンネルを眺める。トンネルの上を川が流れ、その川をリュウキュウアユ(奄美ではヤジという)がピタピタ跳ねている。魚はもともと綺麗な生物で、こういう展示をされると、アートなフィッシュに見えてくる。

モダマ

残念ながら、今回も出会えなかったモダマ【写真提供/奄美市】

飄々と友人がやってきたので、再びマングローブのジャングルへと漕ぎ出す。昼下がりの間のびした時間の中で、カヌーはキールをモダマへ向けている。というか、相変わらずヒルギの中であるが。やや潮が引いてきて、干潟にミナミトビハゼが跳ね出した。こいつは口の中に水を貯え、陸上でも呼吸することができる水陸両生魚らしい。マングローブって、なんて変わり者を創り出すんだ。

そんなこんなを考えながら、目玉はモダマを追っている。一向に見えてこない。友人が首をかしげ出した。オイオイ…。結局3時間ほどジャングルを黙々と漕ぎまくった。そして、結局モダマとの遭遇はなく、その夜、私は名瀬の盛り場屋仁川で友人がすすめる黒糖焼酎を飲みまくった。次は、三太郎峠近くの山に入ることにしよう。(了)




春野洋治郎(はるの ようじろう)春野洋治郎

1955年佐賀県生まれ。1980年から鹿児島市に住み広告物、出版物のライティングを手がける。近年は専門学校講師、e-ラーニング講師など教育分野の仕事も行っている。もともと南方系なのか奄美群島はじめ南の島々への憧れと好奇心が強い。

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奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

吉岡さんあまみんちゅ[no.1]
吉岡美紀さん(奄美ポートタワーホテル支配人)

旧・名瀬市(現・奄美市)生まれ。教職を経て、国際結婚。アメリカに渡り、日本語補習校の立ち上げにも参画した経験を持つ吉岡さん。2006年に奄美に帰ってきてからは、バスガイドやツアーの企画担当として働き、2012年3月にオープンした奄美ポートタワーホテルの支配人に抜擢された。ホテル業に関しては“素人”だと謙そんするが「女性ならではの気配りや、素人ゆえの柔軟な発想を大事にしています」と明るく奮闘する毎日。

「アメリカ在住時、難病に苦しんでいた長男が、奄美に帰るやみるみる元気になったんです」と奄美の大自然が持つ力と人々の温かさに感謝の思いは尽きない。南国の香りとパワーでいっぱいのスイーツ「奄美に来ていただいたお客様に、奄美の心で精一杯のおもてなしする」ことが奄美への恩返しにもつながると信じている。

そんな吉岡さんのオススメは、奄美市笠利町の『いずみ農園直営ジェラテリア La Fonte(ラフォンテ)』。ラフォンテ奄美の農園で採れた野菜や果物を主役に、毎日キッチンで手作りしているジェラートは「南国の香りとパワーでいっぱい」。オーナー・泉さんのこだわりが詰まった、地中海を思わせる店の雰囲気もお気に入りだという。店舗は、奄美空港から中心地・名瀬へと向かう道路添い。奄美の涼味を求めに立ち寄ってみたい。(2012年6月28日)


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DATA

いずみ農園直営ジェラテリア La Fonte

  • [住所]鹿児島県大島郡龍郷町赤尾木1325-3
  • [TEL]0997-62-3935
  • [営業時間]平日/午前11時~午後5時 土日祝日/午前11時~午後6時
  • [定休]火曜日
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