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加計呂麻島のサタ(黒糖)づくり~新糖の季節がやってきた~

author: しらはま ゆみこ(更新日:2013年3月14日)

製糖中を示す湯気

この湯気を見ると「新糖の季節だな~」と感じる。島に春の訪れを告げてくれる。

ほかほか黒糖をほおばる幸せ

できたての黒糖を食べたことがあるだろうか? まだほんのりと温もりの残るひとかけらをほおばる。舌の上でトロリと溶けて、黒糖の素朴で力強い香り、凝縮された旨味とコク、そしてやさしい甘さがじんわりと口の中で広がってゆく。不思議なことに、後味はすっきり。どんなスイーツよりも、できたての黒糖に勝るものはないと思う瞬間だ。

そんなことを体験できるのも、もちろん作っている現場に直接足を運んだ人だけの特権。しかも、いつだって食べられるわけではない。製糖時期は12月中旬ぐらいから5月上旬ぐらいまで。あたりに甘い香りを漂わせながら、モクモクと白い湯気があがっていたら、製糖中のサイン。冬から春先にかけて、この時期だけに見られる島の風物詩だ。

奄美の人の暮らしに欠かせない黒糖。空き瓶などに入れて、家庭や職場に常備されている。来客があればお茶うけとして出したり、家事や仕事の合間にちょこっと食べてほっと一息。料理やお菓子作りにもかかせない。南の島のサンサンと降り注ぐ太陽を浴びて育ったサトウキビ。その汁を搾って、そのまま煮詰めて固めるというシンプルな製法の黒糖。自然の恵みがギュッと詰っていて、ビタミンやミネラルがたっぷり。一口食べると、すばやくエネルギーとなり、疲労回復。リラックス効果も高い。奄美の人の長寿を支える食材の一つで、島の人々は黒糖を毎日の食生活に自然と取り入れてきたのだ。




山積みのサトウキビ

サトウキビも鮮度が命。時間が経つと酸化し品質が低下していくため、2~3日のうちに素早く加工。搾りカスは燃料や肥料として使用する。

小さな集落の、小さな製糖工場

奄美大島の南にある、瀬戸内町・加計呂麻島(かけろまじま)には、小さな製糖工場が4つ。昔からほとんど変わらない製法で黒糖を作っている。そのうちの一つ、佐知克(さちゆき)集落にある「西田製糖工場」に、今年も見学に行ってきた。ここは、今の季節に奄美へ遊びに来た友だちを連れていく私のお気に入りスポット。

奄美大島の北部にある空港から車で約2時間、島の南端・古仁屋(こにや)港に到着。そこからさらにフェリーかけろま、または海上タクシー(貸切船)を利用して、約20~25分でたどり着くのが人口約1400人の加計呂麻島だ。サンゴ礁に囲まれ、リアス式の海岸線が織りなす複雑な地形には30もの小さな集落が点在。奄美大島本島に住む人でさえ「懐かしい」と言う、昔ながらの島のたたずまいを残している。同じ瀬戸内町だが、大島海峡を挟んで対岸の奄美大島本島側に住んでいる私でも、加計呂麻島に渡ったとたん、ゆったりとした島時間が流れているのを感じる。

西田和子さん

西田和子さん。そのほがらかな人柄に会いたくなって毎年行ってしまう。ミネラルたっぷりの湯気を浴びてお肌つやつやなのも、女性には見逃せない!

美しい海岸が目の前にある西田製糖工場。出迎えてくれるのは、まるで黒糖のように優しい笑顔の西田和子さん。和子さんは、説明してくれたり、従業員に指示を出したり、お客さんの対応をしたりと、とにかく忙しい。それでもいつも元気にカラカラとよく笑って、黒糖のことを教えてくれる。

佐知克集落は、もともとサトウキビ産業が盛んで、戦前は砂糖小屋が6カ所もあったそう。昭和36年頃はここを組合の工場として集落で協同利用していたが、町内に大型製糖工場ができたため組合は解散。その後、昭和46年に大型製糖工場が閉鎖したため、昭和47年にご主人の西田寛次さんが個人で操業を始めた。現在、従業員9名の小さな工場だ。

このあたりは砂地で水はけもいいことから土壌がよく、良質のサトウキビが穫れる。西田製糖では、自前の畑からと、ほか約20軒の農家から買い取った加計呂麻島産だけのサトウキビを使用。農家には栽培指導をしながら、糖度の高い良質のものを入手するようにしている。




成型作業

熱いうちに小さくカット。冷めるとどんどん固まり成型できなくなるので、時間との勝負。

手間ひまかけて生まれる、奥深い味わい

製糖工場の朝は早い。なんと和子さんたちは夜中2時ぐらいから、サトウキビを圧搾機でどんどん搾り、糖汁と搾りカスに分けていく。その糖汁が一定量たまったら、朝8時すぎ頃から釜炊きがスタート。3つの釜で丁寧に炊いていくのが西田製糖の特徴だ。

まずは糖汁を一番釜で煮詰め、ここで丹念にアクを取ることが美味しさの秘訣。アクをよく出すために石灰を入れ、不純物も取り除く。それを漉してまたアクを取り除き、二番釜で煮詰める。さらに三番釜で焦げないように混ぜて煮詰めてを繰り返し、どんどん糖度を上げていく。

三番釜

三番釜。舌で固まり具合を確かめながら、とにかく焦がさないように。どの作業も一瞬も目が離せない。

うす緑色だったサトウキビの汁は、三番釜で煮詰め切った頃にはチョコレート色の飴状に。ここで、どっしりと構えているご主人・西田寛次さんの出番だ。三番釜の様子を長年の職人の勘で見極めて、最適の糖度と固まり具合になったタイミングで撹拌機へと投入。クルクルと羽が回る撹拌機で空気を含ませながら黒糖を冷まし、仕上がりの柔らかさを整えていく。黒糖は作業台へと運ばれ、熱いうちに平らに伸ばし、数人で一気にヘラを使ってひと口大の食べやすい大きさに切り分けていく。最後に袋詰めされて、加計呂麻島の純黒糖はできあがり。

3つの釜で煮詰め炊く、そして黒糖の切り分け。この工程を一日に16回ほど繰り返すそう。どの工程にも多くの人手がかかっており、ほとんどが昔ながらの製法と変わらない重労働。こんな一連の作業を目の当たりにしたあとにいただく、できたてほかほかの黒糖はいつもより何倍も美味しくてたまらない。

西田製糖工場■西田製糖工場
鹿児島県大島郡瀬戸内町於斉1883(佐知克)
電話0997-76-0177
※製糖は週1~2回。見学したい場合は問合せをしてからお出かけを。

袋に詰められた黒糖は、それぞれ色や味、香りも違う。それは、サトウキビが穫れた畑の土や、炊く日の気温、湿度、風向きなどによっても変わってくるから。素朴だけれど深い味わいがたっぷりとつまった黒糖は、手間ひまかけて生み出す島の時間の流れと、加計呂麻の自然がそのまま映し出された食べものだったのだ。




しらはま ゆみこしらはまゆみこ

奄美大島在住、島ライター。 埼玉&大分育ち。大分でタウン誌の編集者として勤務してた時に、奄美へ転勤した友だちを訪ね初来島。気づけばその人と結婚し、2003年12月移住。島でも雑誌やガイドブックのライターをしたり、町役場で働いたこともあり。

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奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

松元英雄さんあまみんちゅ[no.10]
松元英雄さん(奄美群島観光物産協会 統括リーダー)

「奄美・琉球の世界自然遺産暫定リスト入りなど、奄美群島への関心が高まっていると感じます」と語る松元さん。奄美群島の観光と物産をトータルでプロモートする奄美群島観光物産協会の統括リーダーとして、群島内外を飛び歩く。「奄美出身のかみさんの勧めもあって」と日本航空を奄美営業所長で退社後、昨年4月から現職に。

あまみシマ博覧会

協会としても力を入れる「あまみシマ博覧会(通称シマ博)」は夏と冬に開催され、地域の魅力を活かした体験メニューが豊富に集まるツアープログラム(着地型観光)として、人気を博しているのだそう。「群島内でも活動への興味が高まってきて、参加地域が増えている」ことを嬉しそうに語る。そして「ぜひ皆さん、奄美を肌で感じにお越しください」と熱くアピールすることも忘れない。

闘牛

そんな松元さんからのおすすめ情報は、昨年10月にオープンした徳之島伊仙町の公設ドーム型闘牛場「徳之島なくさみ館(正式名称:徳之島地域文化情報発信施設)」。4月からは月1回、観光闘牛試合を開催し、事前に予約すれば、闘牛稽古の見学も可能とのこと。ゴールデンウイークには、なくさみ館をはじめ、徳之島各地で連日闘牛大会が催される。迫力と熱気にあふれる奄美の闘牛にぜひ一度足を運びたい。(2013年3月28日)

徳之島なくさみ館

DATA

徳之島なくさみ館

  • [住所]鹿児島県大島郡伊仙町目手久
    ※国道80号線沿いに案内看板
  • [TEL]0997-86-3111(伊仙町企画課)
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