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My奄美!自分だけの空間を求めて!
~世界に奄美だけの生きものたち~

author: 鮫島真一(更新日:2013年7月11日)

フェリエベニボシカミキリ

鮮やかな朱色が美しいフェリエベニボシカミキリ。奄美の深い森が守っている希少なカミキリである。

幻の虫たちを追って

今から34年前の1979年6月24日、私は奄美大島中央林道の土場(森の木を切り出すための作業場)で、網を片手に仁王立ちしていた。目的は、昆虫採集である。それまで、かたくなに昆虫研究者の侵入を阻んできた奄美の森に一本の長い林道が走ることになり、その最奥の切り出し現場に来ていた。

土場の上方に組んだ足場に立つ私の眼下には、原生林といっていいほどの照葉樹林が広がり、森からは土場の上空に向かって強い上昇気流が吹いていた。この上昇気流を利用した昆虫採集法を「吹き上げ採集法」という。吹き上げてくる風に乗って飛んでくる虫たちを網で一閃、捕まえるのである。本当は、森を歩き回って採集したいのだが、毒蛇ハブが怖くて入れない。そこで、土場での「吹き上げ採集法」の出番となったわけである。

金ハブ

島の守り神ハブ。写真は、金ハブといわれる美しい体色の子どものハブ。常に足元への注意を怠らないことが大切である。

当時、屋久島・トカラ・奄美諸島の昆虫調査は始まったばかりで、次から次へと新種の昆虫が島々から発見され、昆虫界を賑わしていた。そんな中、奄美大島はなかなか調査が進まずにいた。理由は、上述したハブの存在であり、よそ者から森を守っていた。それが、中央林道のおかげで障壁が一気に崩れ、当時大学生だった私の元へも念願の奄美で昆虫調査ができるという情報がもたらされたのであった。

鹿児島県の天牛類(カミキリムシ)を卒論題目としていた私はこれ幸いと、奄美固有のカミキリムシを追った。そしてさらに幸運なことに、フェリエベニボシカミキリ、ヨツオビハレギカミキリといった幻のカミキリムシたちと出会うことができた。それらはいずれも、奄美本島固有種、世界で奄美大島にしか生息しない美麗な希少種である。昆虫も他生物同様、カタカナ和名を漢字に直すとその意味が分かる。フェリエ紅星髪切りは、奄美に布教したフェリエ神父の名を冠し、体色が赤く黒い点がある髪切り虫である。四帯晴れ着髪切りは、4つの帯の模様があり、晴れ着を着たように美しい髪切り虫である。山中に1週間こもり、美しいカミキリムシたちと出会うことのできたあの時の感激は、今でも昨日のことのように鮮明に蘇ってくる。そして、その時、いつかきっと奄美に住むと誓ったのだった。




固有種を育んできた奄美の森

多数の固有種を育んできた奄美の森。奄美の自然が生み出した奇跡をぜひ多くの人に知って欲しい。【撮影/犬塚 政志】

固有種と固有財産

奄美は“固有種”が“豊富”であると言われる。これは本当にすごいことだ。固有種とは「世界中でそこにしかいない種」という意味である。固有種の存在だけですごいことなのだが、驚くべきことに、世界地図で見れば小さな小さな奄美に、その固有種が多数存在する。これはもはや奇跡と言わざるを得ない。昔から奄美に住む島民の皆さんには当たり前の自然が、外の人間には憧れであり夢の世界なのだ。「奄美に住む」という念願が叶い、今、奄美で教職にある私は、そのことを奄美の子供たちに伝えている。

少し話は逸れるが、奄美や鹿児島県本土には、かつて方言を封じる教育施策があった。奄美の場合、方言を使ったら「私は、島口(島の方言)を使いました」 という札を首から提げさせられたという話があり、胸が痛んだ。方言が理由で、本土でつらい目に遭ったことを少しでも改善するためであったとはいえ、方言を禁止するのは間違っていると断言できる。固有の動植物が存在するこの島には、固有の文化があり、自然を生かした固有の教育ができるはず。そして、それは島外に出たときに、子供たちの自信と誇りになる。固有種のいるこの島々で、世界でここにしかない教育を展開することが、この島の子供たちの固有財産になると確信している。




アジサシ保護の活動

奄美野鳥の会と地元小学生によるアジサシ保護活動の様子。自然の保護と活用のバランスは、世界遺産登録によってさらに脅かされる恐れも。

世界遺産登録の是非と奄美自然史博物館創設の提唱

今年1月に奄美・琉球が世界遺産の暫定リストに追加された。このことに反対の意見があるのは当然である。なぜなら、世界遺産になった屋久島が抱える問題を皆、知っているからである。たくさんの観光客が植物を踏み荒らし、レンタカーが小動物をはねる。奄美も同じ憂き目に遭う可能性が高い。しかし、奄美の自然は、世界の共有財産であり、日本人、島民だけのものではないというのも一理だ。世界中の人たちに奄美・沖縄の自然をを知ってもらい、見てもらうべきである。しかし、今、奄美・沖縄が世界遺産に登録されたら…いくら賛成派の私でも、危機感は否めない。早急の対策が必要である。

自然を保護する一方で、自然を資源として積極的に生かし、産業を創造していくことは、未来を生きる子供たちへ残す今の大人の責務だろう。そのための一つの有力な方策として、「奄美自然史博物館」の創設を提唱したい。「自然の保護・再生」「産業創生のための自然探究」「奄美の子供たちへ向けた科学的教育」の3つのコンセプトを柱にした新しいタイプの自然活用型博物館だ。これまでにない機能を持たせた博物館の創設が、世界遺産登録前に必要だという意見を持つ研究者・有識者によって、近々、『奄美自然史博物館を創る会』(仮称)が発足する。注目してほしい。




アマミイシカワガエル

交尾シーズン、雌に向かって岩場で鳴いているアマミイシカワガエル。人気を感じ警戒中。警戒すると、頭を下げ、身を低くする。

あなただけの奄美を

少し真面目な話になりすぎたが、私は、昆虫だけでなく奄美のすべてに魅せられた一人だ。先日、テレビ番組の中で、仲間由紀恵という美しい女優の対談があった。沖縄出身の彼女は、本土の乾燥した気候は、肌に合わないという。沖縄に帰ると、しっとりとした湿気があり、肌も心も落ち着くのだそうだ。奄美諸島も同じで、ほんのりとした湿度は沖縄に勝るとも劣らない。奄美に来れば、お肌が綺麗になること間違いなしだ。奄美の子供たちでアトピーにかかっている子供はほとんど見受けられない。Iターンの病気がちの友人も「自分は奄美に生かされている」と言う。

そして奄美の観光だが、北は笠利崎から南は請島まで、遺跡や島唄などの文化から世界遺産候補の大自然まで、そのバリエーションは実に豊富である。結いの心(助け合い支え合って生きる心)を持った島民との心の触れ合いも、島を巡る助けとなり、思い出深くしてくれるだろう。自分なりにいろいろな観光ルートを組み合わせ、偶然の出会いも絡めば、きっと、自分だけの奄美を満喫できるはずだ。

私のお勧めは、夜の自然探索、ナイトツアー。奄美固有の動物たちの大半は夜行性だ。ぷりっとしたお尻を見せて逃げていくアマミノクロウサギや、松ぼっくりをほおばる姿が愛くるしい全長60センチにもなる日本最大のケナガネズミ、私見だが、日本で一番美しい容姿と声を持つとアマミイシカワガエル、大島紬の柄にもなった気品高き最強の蛇ハブなどなど、奄美の夜は実にスリリング!奄美はあなたを待っている!あなただけの奄美を探しに来てください。




鮫島 真一鮫島真一

念願叶っての奄美大島在住。小学校教師兼昆虫研究家。鹿児島市出身。奄美昆虫同好会事務局。小さな頃から虫好きで,虫を追って奄美に移り住んだ昆虫オタク。子どもたちと毎日のように虫を追っている。奄美に昆虫の館を建てるのが夢。

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奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

麓憲吾さんあまみんちゅ[no.14]
麓 憲吾さん(あまみエフエム ディ!ウェイヴ 放送局長)

2007年に開局した「あまみエフエム ディ!ウェイヴ」。2011年からはインターネット放送も開始し、今や“世界中の島っちゅ”に奄美の今を届ける24時間放送のコミュニティFMだ。放送局長の麓憲吾さんは「ネット放送は、難聴地域対策が一番の目的なんですが、結果として島外の島っちゅともつながれたというのはうれしいことです」と語る。

元ちとせ、中孝介、我那覇美奈、カサリンチュなど、すでに全国メジャーとなった島関連アーティストがパーソナリティを務める番組が盛りだくさん。生放送にも力を入れている。「コミュニティFMとは思えないでしょ」と笑うが、ここまで番組が揃う秘訣を問うと「それぞれが奄美を思う気持ち」と熱っぽいコメント。また、活動を支えてくれる島内外1,600名を超えるサポーター会員(2013年4月現在)、そしてリスナーへの感謝も忘れない。

島内外で行われる奄美の音楽イベントもその多くを手掛け、自らドラムを叩くことも。ただ「バンドの最後列でステージや観客を見ながらリズムを刻むドラマーならではの感覚なのか、夜ネヤ、島ンチュ、リスペクチュッ!!裏方のほうが燃えるんです」と表に立つことはない。「裏方稼業でとにかく走り回る毎日」と苦笑いする。10月19日(土)には、奄美群島本土復帰60周年を記念して『Setting Sun Sound Festival in Amami Vol.4』が過去最大規模で開催される。「最高の砂浜と夕陽のなか、音楽にひたりにきてください」(2013年7月25日)

出演アーティスト

DATA

Setting Sun Sound Festival in Amami Vol.4

  • [日時]10月19日(土) 開場15:30/開演16:30
  • [場所]奄美パーク(4000人収容)
  • [出演]中孝介、カサリンチュ、キマグレン、DEEN、元ちとせ・・・and more! (50音順)
  • [公式HP]www.setting-sun.jp
  • [情報]翌20日(日)には奄美大島のアーティスト・唄者を集めた音楽イベント「夜ネヤ、島ンチュ、リスペクチュッ!!」も開催(左写真)。こちらも要チェック!
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