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神秘の洞窟探検
~沖永良部島の歩き方~

author: 賀来裕二(更新日:2014年1月9日)

侵食が生んだ風景

隆起したサンゴが雨や風、波により侵食された風景

隆起珊瑚の島に降りた奇跡の重なり―

鹿児島から南に536㎞、鹿児島県でも2番目に南の位置に、私が住む沖永良部島(おきのえらぶじま)がある。標高は約240mの山というより丘のような平坦な地形で、この辺りの島々の中では珍しくハブがいない島である。年間降水量約2000㎜、平均気温22℃という温暖な気候だ。

洞窟からの珍しい眺め

数ある洞窟の中には、海と空が半分に見える場所もある

少し専門的な話になるが、この沖永良部島は近隣の徳之島や奄美大島とは少し島のでき方が違っている。フィリピン海プレートに堆積した泥岩(板状に固められた粘土質の岩盤)が地殻変動により隆起し、何千万年の月日の間、地球環境の変化にともない死滅と再生を繰り返し、幾層にも分厚い珊瑚帯を形成。そのなかで生まれた隆起珊瑚の島なのだ。さらに、その後も海水面の変化により3回程、島全土が沈没を繰り返し、より一層珊瑚によるコーティングが施されたという。

この島に移住し、島を巡っているうちに知ったのだが、この島には何百という数の洞窟があり、中には日本で2番目に長い大山水鏡洞(おおやますいきょうどう)という洞窟もある。なぜ、この小さな島にここまで数多くの洞窟ができたのか。まず、弱酸性の雨によって、石灰岩の大地に、水の力で削る「侵食」と化学反応で溶かす「溶食」が繰り返される。削られ溶かされた石灰岩と基盤岩の境には洞窟が形成されるわけだが、この島の特徴である「平坦さ」が雨水の流れを緩やかにするため、さらに洞窟の成長が促されたというわけである。




ホーやクラゴー

昔は、この場所を頭に水を入れた桶をのせた女性たちが行きかった

ホー(湧水)とクラゴー(暗川)と島人の繋がり

沖永良部島には地上を流れている河川が余多川(あまたがわ)、奥川、石橋川のわずか3河川のみである。それに対し地下には何百という数の河川があり、島に降った雨は主に地下(洞窟)を通り海まで流れている。その所々に「ホー(湧水)」や「クラゴー(暗川)」と呼ばれる場所がある。

ジッキョヌホー

映画「男はつらいよ」のワンシーンでも登場したジッキョヌホー

昭和36年初頭に簡易水道が設置されるまで、島で暮らす人々はこれらの場所を、生活用水として大切に守り、交流や遊びの場として整備した。そのため、現在でも各集落の中心には大きなホーやクラゴーを見ることができ、上水道が整備された現在でも昔と変わらず大切にされている。

私の家の近くにもジッキョヌホーと呼ばれる「平成の名水百選」にも選定されているホーがある。夏には子供たちを連れて泳いだり、時にはウナギ釣りなどもする。地元の小学生などもたくさん遊んでおり、夏祭りなども行われる。私の大好きな場所のひとつだ。




鍾乳洞

自然のおりなす造形美に、しばし言葉を失う

ケイビング(洞窟探検)

<お問い合わせ 編>

「ケイビング(洞窟探検)ってどんなことをするんですか?」「私たちのような一般人や子供でもできるんですか?」お客様からのお問い合わせは、ほとんどこのフレーズでスタートする。

「大丈夫です。沢歩きのような感じです。空は見えないけど…。全身ほぼズブ濡れで中腰で歩いたり、時にはホフク前進、狭い所を通ったり水の中を歩いたり…。観光地化されていない手つかずの自然洞なので、豆電球1つ無いです。水温・気温は1年を通して21℃位で、さまざまな形の鍾乳石がおりなす景観は、まるで現実世界から飛び出したようですよ」お客様の頭の上には「???」が踊っている。いまだにケイビング未体験の方に上手く伝える形容詞が見つからないでいる。

そんなときのキメ台詞はこうだ。
 「もし私が、私に伝えるとしたら『絶対に体験した方がいい!口では形容しがたい世界がそこにはある!』」である。

<いよいよ当日!! 編>

お客様と初めて顔を合わせる。皆さん一様に期待と興奮と不安が入り混じった表情。ショップで注意事項やレンタル装備の取り扱いを説明し、着替えて移動する。車を止めた場所から徒歩5分程で洞口だ。最終チェックを済ませ、ツナギに手袋、ヘッドライト付きのヘルメットを装着した一団が森の中へ消えて行く。その姿はまさに探検隊だ。しばらく進むと洞窟がポッカリと口を開け、神秘の世界へいざなう。

50mも進むと地底の川に到着。大雨の時には一時濁ったりもするが、普段は透明度の高い豊富な水が滔々(とうとう)と流れている。基本的には水の流れに沿って洞窟が形成されるため、その流れに沿って進む。ガイドが水中に防水ライトを入れると、光の吸収効果でエメラルドグリーンに輝く美しい世界が広がっていく。

「わ~綺麗~!!!スゴイ!!!」ありきたりだが、本当に感動した時は皆ストレートな言葉を口にする。

さまざまな鍾乳石のでき方などの説明を加えながら歩みを進めて行く。移動距離約800m、2時間程の探検も終わりに近づいて来た。洞口からの光が一筋のラインとなり私たちを迎えてくれる。久しぶりの陽の光に、安堵感に包まれたようだ。ガイドが付いているとはいえ、2時間に及ぶ地底の探検は、程よい緊張とスリルを与えてくれ、達成感と一体感も育む。帰りの車中では、初対面のゲスト同士も意気投合し、夜の打ち上げに行ったりということも…。

巨大リムストーンプール

棚田のように広がる巨大リムストーンプール

よくお客様から別れ際に「『絶対行った方がいい。口では形容し難い』の意味がわかりました!」とのお言葉をいただく。最初の「???」がクリアになったようでうれしい。初めての感動は、誰しも平等に一度きりであるが、お客様の『初めての感動に常に立ち会える』のはガイドの特権だ。これからも、多くのお客様の初めての感動をサポートしていきたい。

さまざまな自然保護の取り組みがあるが、私たちは人を近づけないことでの保護ではなく、安全や環境に配慮しつつ、この美しい世界を体験することによって、自然の価値やその保護の必要性を認識してもらえたらと考えている。海を守るために森を育むという考え方があるように、地下を守るために地上を、水を、森を育み、次の世代へバトンを繋げていきたい。




賀来裕二(からい・ゆうじ)著者紹介

ケイビング・クライミング&ダイビングショップ「アイランドブルー」店主。2011年3月、母の故郷である沖永良部島へ家族6人で移住。島の美しい自然のPRと保護、人材育成を目的に発足した沖永良部島ケイビングガイド連盟の会長も務める。

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奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

あまみんちゅあまみんちゅ[no.20]
酒井一徳さん(Shall We Design 代表)

「奄美群島には、日本そして世界で勝負できるすばらしい商材がたくさんあります」と力強く語る酒井さん(建築家、酒井建築事務所勤務)。同時に「あとは、観光客や島外のマーケットを意識した商品やパッケージのデザイン、プロデュース方法の問題だと思います」と課題を挙げる。

代表を務める「Shall We Design(シャル ウィー デザイン)」は、デザイナーやイラストレーター、写真家など、奄美群島内外の若手クリエイター15名で組織する団体。デザインやプロデュースのサポートなどを通じ、奄美群島の商材の価値向上を目指している。あわせて「奄美にU・Iターンしたいクリエイターの受け皿にもなりたい」という目的もあるのだという。それぞれが技能を生かし、奄美産蜂蜜のデザインや揚げ菓子サーターアンダギーのプロデュース、自治体のガイドブックなどのプロジェクトに携わってきた(右下写真)。

活動の拡大に伴って「これまでは奄美を思う気持ちだけでつながってきた任意の団体だったが、責任をもってプロの仕事をしていくためにも必要」と法人化を決意、現在はその手続きに奔走している。「離島が抱える問題はどこも似ていると思うので、将来的には全国の離島をサポートできるようになりたい」と先を見据えたプランも。

おすすめの奄美を聞くと「仕込みも仕上がりもすごい」と奄美の結婚式の余興を挙げ、「余興ナンバーワンを決める『Y-1グランプリ』というのがあるんです」とニッコリ。仕掛け人の安田祐樹さん(マイライフスタジオ代表)も「Shall We Design」のメンバーで、1月26日に開催された第4回も大盛況・大爆笑だったとのこと。楽しくまじめに奄美をプロデュースする彼らの動きに注目したい。(2014年1月30日)

Y-1グランプリ

DATA

Y-1グランプリ

  • 奄美の余興で一番おもろい奴は誰だ!
  • Y(余興)-1(わんが一番)グランプリ。第4回の様子も随時更新予定、これまでの大会の様子も確認できるホームページは下記リンクから。
  • Y-1グランプリ ホームページ
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