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古き良きものを未来へ繋ぐ

author: 牧統 大(更新日:2014年3月13日)

大浜海浜公園

空を見上げると無数の星が瞬く(大浜海浜公園)

時を感じて

大地に横になり天を仰げば深く透き通るような空が広がり、それを囲むように緑の山々がそびえ、背中からは土の香りと温もりがひしひしと伝わってくる。ここは鹿児島県本土から南へ約380kmほど離れた奄美大島だ。

龍郷町

奄美の海が見せる表情はとても豊かで誇らしい(龍郷町)

島の全周が約460kmもある奄美大島は、四方をエメラルドグリーンの海に囲まれ、島の内部にはその海を形成するのに大切な役割を担う深い山々が存在している。アマミノクロウサギやルリカケスなど奄美地方にしかいない固有種も多く生息しており、まさに「南の島」と呼ぶのに相応しい光景が広がっている。ここ奄美大島では環境の変化に適応してきた大自然とともに、時代の変化に合わせながら受け継がれてきた奄美の文化もしっかりと息づいている。

今回はそんな奄美で文化や自然の流れを真っ向から受け止め、古き良きものを未来へ繋ぐ2人の人物を紹介したいと思う。




川畑さんの作業場

トントントンと心地よいリズムが響く川畑さんの作業場(奄美市)

奄美大島紬に見出した可能性

最初にご紹介するのは、奄美大島のゆっくり流れゆく時間の中で、ひとつひとつ心を込めた作品作りをしている川畑裕徳さん。小さい頃からものを作るのが好きだったという川畑さんは、「若い人にももっと親しみを持って欲しい」という想いから、奄美の伝統工芸品である奄美大島紬と本革を融合させたポップな財布や名刺入れ、アクセサリーなどを作っている。

実家が呉服店だった川畑さんにとって、大島紬を目にする機会は多かったが、幼い頃は「古いもの」という印象が強かったという。しかし、その後滞在したオーストラリアで、先住民族の伝統楽器と現代の楽器という、一見相性が合わないような楽器同士による見事な演奏を聞き、とても感動。ふと、奄美大島の伝統工芸品である大島紬も、何か新しい全く別のものとコラボレーションすると素晴らしいものが作れるのではないかと考え、大島紬と本革のコラボを思いついたと話してくれた。

沖永良部島

大島紬と本革によるコラボレーション作品(マウスパッド)

約1300年の歴史を持つと言われている大島紬は、奄美大島の美しい自然をモチーフにした柄が多く、手織りで一本一本に職人さんの心が込められている。大島紬として出来上がるまでには、ざっくりと分けて40工程、細かく分類すれば400~500もの工程があるといわれ、一着分の反物が出来上がるまでに、実に数ヶ月という長い月日と高い技術・経験が必要とされる。

そんな大島紬だが、時代の変化とともに着物を着る機会や人が減り、需要が大きく落ち込んでいる。需要が無ければ、織工さんも減らざるを得ないという悪循環の中で、大島紬を巡る状況はますます厳しくなってきている。そんな中で、川畑さんのような「新しい大島紬の価値を提案する」存在はとても大きい意味を持つ。高価な大島紬だが、まずは小物から若い人も身につけてもらえるようになることは、復活に向けた大切なきっかけになるだろう。




ハブと愛まショー

豪快な手さばきで観客を魅了する「ハブと愛まショー」(原ハブ屋奄美)

自然に向き合い共生する

次にご紹介するのは、奄美に生息するハブと人々の共生を願う「原ハブ屋奄美」の代表を務める原武広さんだ。「原ハブ屋奄美」ではハブのことが楽しくわかるパフォーマンスショー「ハブと愛まショー」や、ハブ革を使った革製品を製作している。

自然豊かな奄美大島には毒蛇ハブが生息しているが、実はこのハブ、普段生活している中では滅多に遭遇する機会はないのだ。原さんによると、ハブは夜行性のヘビのため日中は陽のあたる場所へは出没せず、むやみに草むらや薮に入らない限り遭遇することがないという。私の知人でも20数年間奄美に住んでいて、一度もハブを見たことがないという人もいるくらいだ。

金作原原生林

手付かずの自然が残る奄美大島の風景(金作原原生林)

時には人にも危害を加える毒蛇ハブだが、奄美の自然がここまで残されてきたのも、ハブのおかげだといわれている。ハブの存在が、山中への人の立ち入りを制限し、多くの固有種を育む奄美大島の大自然が残されてきた一面があるのだという。強弱ある喋りで、時にユーモア溢れるギャグを飛ばす原さんだが、自然を見つめるその眼光は鋭く、ハブを通してみる奄美の自然と人々の共生のあり方について真剣に話す姿は、なんとも勇ましく見える。

島に住むということ、島に生きるということ、大切な命をいただくこと。

自然と強い関わりをもって時代を生き抜いてきた島の人々のDNAには、自然を愛し自然と対峙する気持ちが脈々と受け継がれいる。ご紹介した2人の話に、繊細な時代の横糸と「このままではいけない」という強く太い信念の縦糸、そこに紡ぎだされる奄美の“色”を感じていただけたら幸いだ。奄美に住む人々は今日もまた、島に広がる大自然を見つめながら古き良きものを未来へ繋いでいくのだ。




牧統 大(まきとう・まさる)著者紹介

1986年奄美大島生まれ。奄美をもっと知って欲しいという想いから、奄美群島の美味しいものや特産品を取り扱うネットショップ、がじゅMarineを運営。趣味で始めたカメラを手に島中を駆け巡り、奄美の風景や人々の様子もウェブで届けている。

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奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

あまみんちゅあまみんちゅ[no.22]
いかりんぐはやとさん(エフエムうけん ボランティアスタッフ)

宇検村のコミュニティラジオ局「エフエムうけん」で、2010年の開局からおよそ3年間続いたトーク番組「マニアックさん いらっしゃい」のパーソナリティを務めた“いかりんぐはやと”こと重野隼人さん。今でもボランティアスタッフに名を連ね、ちょくちょくゲスト出演もする宇検村の有名人だ。

「村の青年団が中心となってひとつ番組を作って欲しい」というラジオ局からの要望に、当時団長だった重野さんが“やむなく”応える形で「マニアックさん いらっしゃい」がスタートした。村の内外からマニアックなゲストを招いての週一プログラム。「今でも、ぐだぐだだったなぁ~と反省します」というものの、その自然体の取り回しで人気を博した。現在は、スポーツの名場面などを振り返る番組「レジェンド」で、主に野球関連の時のゲストとして出演し番組を盛り上げている。

本業は、海の男。株式会社拓洋 まるあ真珠事業部でクロマグロの養殖に携わる。「クロマグロの養殖といえば、おとなりの瀬戸内町が有名ですが、実は宇検村でも盛んなんですよ」と元気よく語ってくれた。実際に、宇検村は瀬戸内町とあまみんちゅサブ肩を並べるほどの生産量を誇るクロマグロ養殖の拠点。宇検村の美しい海で丹念に育てられたクロマグロは「本当においしいので、ぜひ食べて欲しいですね」。

「青年団仕込み」の芸達者ぶりで、モノマネをはじめレパートリーも豊富。“いかりんぐはやと”のあるところに笑いあり。宇検村の笑顔を作るエンターテイナーなあまみんちゅだ。(2014年3月27日)

あまみんちゅメイン

DATA

宇検村のクロマグロ養殖

  • 奄美大島最高峰の湯湾岳(ゆわんだけ)の眼下に広がる深い入り江・焼内湾(やけうちわん)。湯湾岳から望む焼内湾は、奄美十景のひとつに数えられる。
  • 宇検村のクロマグロ養殖はその焼内湾で行われ、20代から50代と幅広い年齢層の村民が、多数従事する重要な産業となっている。生産されたクロマグロは、主に関東・関西方面へ出荷され、味についても脂ののりが良く美味とされている。宇検村ではクロマグロ以外にも、真珠貝やクルマエビの養殖も盛ん。
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