TOP 奄美なひととき > 2014年9月
shadow

違いを楽しむ島暮らし
~普段の生活から見えてくる奄美~

author: 上野 紋(更新日:2014年9月11日)

末広市場ディ

2012年にオープンした末広市場ディ!放送所。駄菓子屋の奥がスタジオ

恥ずかしがらずに「うがみんしょうらん!」

うがみんしょうらん、というあいさつを聞いたことがありますか。奄美大島の言葉(シマグチ)で「こんにちは」という意味です。

「うがみんしょうらん…」の張り紙

スタジオの前には「うがみんしょうらん…」の張り紙がある

奄美市名瀬の中心市街地、昔ながらの末広市場の一角に、私たちあまみエフエムの駄菓子屋つきスタジオ「末広市場ディ!放送所」があります。ここでは駄菓子を買いに来た街の子どもたちも、ラジオの生放送に飛び入り出演する皆さんも、シマグチで「うがみんしょうらん!」「ありがっさまありょうた!(ありがとうございました)」とあいさつします。何それ、と慣れないことばに驚く小学生や、聞き返してゆっくりと復唱する観光客の方、恥ずかしいのか小さな声で控えめに、かと思えば照れ隠しにわざと大声で返す高校生など、反応もさまざま。最近は、私たちが声をかけるより先に、あいさつをしながら店に入ってくる子も多くなりました。

街なかや集落ですれ違うと、大人も子どももあいさつを交わすのが島では当たり前。照れながら「うがみんしょうらん」と返してくれる子どもたちの表情に嬉しくなり、そして少しだけ、その素直さがうらやましくなります。




八月踊り

旧暦八月は、各集落でチヂンの音が聞こえてくる八月踊りの季節=奄美市笠利の佐仁集落

戸惑うばかりのシマ(集落)暮らし

子どもの頃は、島にいることを素直に受け止められませんでした。鹿児島の本土で育ち、親の転勤に伴って一家で名瀬の集落へ引っ越したのは小学校5年生の春です。同じ鹿児島県内なのに鹿児島弁ではない言葉を話すクラスメイト、「あんたは上野さんちの子じゃがね、お母さんはどこのシマ(集落)の人ね、きょうだいは何人ね」と、近すぎる距離であれこれ話しかけてくる集落の人たち、秋になると毎晩公民館から聞こえてくる八月踊りの歌声とチヂン(太鼓)の音。鹿児島市内の住宅地では経験したことのなかったすべてに戸惑いました。

公民館での宴会に招かれても愛想良く振る舞えず「私は島の人とは違う」と頑に仏頂面を貫いて、炊事場にいた母や婦人会の皆さんを呆れさせていました。それでも、島で初めて食べた鶏飯やスモモは大好物になり、気づけば同級生と同じイントネーションでけんかをし、冗談を言い合うようになるから不思議です。中学を卒業して島を離れ、鹿児島での高校生活が始まっても、まるで生まれ育った地元から新しい街へ移ったような気分で「島とは違う」と仏頂面をしていました。

その後も4、5年おきに、やれ成人式だ、卒業旅行だ、親が徳之島に転勤したから、と理由をつけては島を訪れていました。その後、何の縁か3年前の春から名瀬に暮らし、あまみエフエムで番組を作っています。







豊年相撲

大和村の豊年祭で奉納される豊年相撲

間口は広く、奥行きも深い奄美

2007年に開局した島ラジオ「あまみエフエム・ディ!ウェイヴ」は、島に住むシマッチュに向けて日々放送しています。船の運航状況や天気予報、台風接近時の災害放送だけでなく、戦後奄美群島がアメリカ軍政下にあった頃の人々の暮らしやシマ唄、シマグチに地区運動会など、テーマには事欠きません。

なかでもおもしろいのが、豊年相撲や八月踊りといった季節ごとの集落行事。島には正月やお盆、3月3日や5月5日の節句など旧暦の行事が多くありますが、地域によって日取りや呼び名、行事の有無などに違いがあるのです。たとえば、10月になると奄美大島北部で、新しい種を蒔けたことを祝い、豊作を祈る「種おろし」が行われます。夜になると集落のあちこちを巡って八月踊りを踊る、老若男女が楽しみにしている行事です。

ところが、ある山を一つ隔てた集落の人から「うちの集落には種おろしはないよ、種おろしと言う言葉を聞いたこともない」と言われたことがありました。同じように行われていた風習が時代の流れとともに廃れて行ったのか、そもそも山に阻まれて伝わらなかったのかはわかりません。海に囲まれ、面積や人の動きにある程度限りがある島の中でもこんなに違うのか、と驚かされます。

奄美まつり

真夏に開かれる奄美まつり。パレードで巨大なハブに巻かれ、水をかけられるといいことがあるらしい

この違いに興味を持ち、自分が生まれた島のことをもっと知りたい!と行動する人の多さにも驚きます。最近はさまざまな地域で遺跡などを辿るシマ(集落)歩きが行われています。高校を卒業して島を離れたある大学生は、夏休みの帰省期間をつかって、興味のある遺跡や滝を訪れていました。「ずっと住んでいた島のことを知らないから、大学の友達に伝えられなくて悔しいんです。興味のあるところには自分で行って見てみたい」と、彼は話してくれました。

シマッチュにとっても、掘っても掘っても興味の尽きない奄美大島。ですが、掘り下げようと意気込まなくても十分楽しめます。「奄美のことを何も知らなかったのに、3日で大好きになった!」。この夏、関東から初めて奄美大島を訪れた友人たちは、そう言って笑顔で帰って行きました。マリンレジャーなどの予定があったわけではなく、事前に滞在先と車だけを予約した2人は、老舗の鶏飯を食べ、大浜海浜公園でウミガメの餌やり体験をし、山道と海沿いを4時間ドライブして、野生のヤギや夏祭り名物の舟こぎ競争に出合い、満天の星と天の川を目に焼き付けたのだそうです。島で出合った景色をめいっぱい受け止めて楽しんでくれたことがとても嬉しかったし、ここは目的のない旅人にも「また来たい!」と思わせる魅力を持った島なのだとあらためて感じました。




大浜海浜公園

奄美大島で一番メジャーな海水浴場・大浜海浜公園。東シナ海に沈む夕日を眺めにくる人も多い

自分との違いを入り口に

奄美には「サバクリ」という言葉があります。祭りサバクリ(段取り)にお昼ご飯のサバクリ(準備)、余興サバクリ(企画)に旅行のチケットサバクリ(手配)と、何にでも使う便利な表現です。取材で出会う方々からは生まれ育った島に暮らすことを強く意識させられます。思い返すと「転勤族の子」だった頃の私は、島で続いてきたサバクリを楽しみながら生活する人々に衝撃を受けて「自分とは違う」と突っぱねていたのかも知れません。いまは、番組を通じて島の日常をより濃く伝え、シマッチュの皆さんと一緒に違いも楽しめたらと思いながら番組を作る毎日です。

みなさんも、まずは奄美に触れてみませんか。自然への感動はもちろんですが、言葉でも習慣でも、心にひっかかる何かに出合ったら、そこからあなたと島の関わりが始まるはずです。

ありがっさまありょうた!




上野 紋(うえの・あや)著者紹介

1982年 国分市(現・霧島市)生まれ。2011年より奄美市名瀬在住。あまみエフエム ディ!ウェイヴの番組制作スタッフ・パーソナリティとして、朝、昼、夕方のワイド番組などを担当している。

shadow

奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

南郷さんあまみんちゅ[no.28]
南郷 修次郎さん(「満月のお好み焼」代表)

奄美市と鹿児島市で「満月のお好み焼」を営む南郷修次郎さん。奄美市出身で、高校卒業と同時に進学のため埼玉県へ。26歳の時に帰郷して、奄美市名瀬にある実家のお好み焼き屋を継ぎ、関西出身の母親の味を守っている。「満月」の由来を母に何度か聞いたこともあるが、いつも答えは決まって「ええ名前やろ」とだけ言ってにんまり。「多分、色と形がお月様みたいだからかな」と修次郎さん。名前にちなんで、毎月満月の日、人気のミックス焼きが500円ワンコインのサービスデーも好評だ。

実家に帰ると必ず立ち寄るのは、大浜海岸の夕陽同市名瀬の大浜海岸。もっぱら1人で歩き、夕日を眺める。市街地に近い海岸周辺は「奄美市大浜海浜公園」(http://www.michinoshima.jp/)として整備され、白い砂浜の海水浴場やシュノーケリングが楽しめる岩場があり、キャンプ場などもある「バラエティーに富んだ遊び場」。そのそばの小浜海岸は、サーファー仲間が“スーパー小浜”と呼ぶ大波が年に数回、現れるという。海岸線と平行して何百メートルと続く、長く乗っていられる(ロングライド)トンネル状の波は、「ほかの場所ではめったに出会えない」。これまでに数回乗ったことがあるが、「まさに地形が生み出す幻の波。ぜひ体験しに来て、奄美の海の魅力をぜひ知ってもらいたい」。

満月のお好み焼

DATA

満月のお好み焼

  • [店舗情報]
  • <鹿児島市>
  • [武岡店]電話099-283-2333
    絵本などを置いたキッズスペースや授乳室もあり、小さな子ども連れにも安心。
  • [天文館店]電話099-222-0161
  • [オプシアミスミ店]電話099-259-0181
  • <奄美市>
  • [奄美本店]電話0997-53-2052
    HP=http://www.o-mangetu.com/
shadow