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命の輝きあふれる徳之島の海
七色の彩、ヤコウガイに魅せられて

author: 池村 茂(更新日:2014年11月13日)

徳之島の海

どこまでも澄みわたる徳之島の海。だが一日として同じ景色はない

一年中命の輝きを感じられる海

奄美といえば、一番に浮かぶのは青く美しい海だろう。島々を囲む海は海岸の形状により、さまざまな「顔」を持つ。年中穏やかな波が打ち寄せる場所や、ごつごつとした岩肌に力強い波が打ち寄せる場所など、場所が変われば表情もがらりと変わる。青さもそうだ。海岸によって、日によって、季節によって色合いは微妙に違い、一つとして同じ景色はない。

徳之島の北東部には、干潮時には水面から50センチほどまで迫る、サンゴの森を観察できる海がある。視界いっぱいに広がる青紫や緑、赤茶など色鮮やかなサンゴは息をのむ美しさで、見る者を圧倒する。年々群島内の浅瀬のサンゴが減少する中、シュノーケルひとつでこれほど見事な景色を見られる場所は他にはなく、まさに群島一と言える。

サンゴの海

視界いっぱいに広がる「サンゴの海」。息をのむ美しさだ

島の夏は長い。海中では色とりどりの熱帯魚が乱舞し、ウミガメたちが悠々と泳ぐ。また、夏は多くの生き物たちが産卵シーズンを迎える時期でもある。夜になると多くのウミガメが産卵のため浜に上陸し、ふ化した小さな命が次々に海へと帰っていく。大潮には、天然記念物のオカヤドカリも一斉に大行進を始める。海中ではサンゴの産卵もあり、幻想的な世界が広がる。

そんなにぎやかで暑い夏が終わると、爽やかな風と共に秋がやってくる。島の海岸は現在、しっとりとした秋の雰囲気に包まれている。岩場では、イソマツがピンクの花を一斉に咲かせ、色鮮やかな景色が広がっている。そして秋が終わると、島に短い冬がやってくる。沖には雄大に泳ぐクジラの群れがやってきて見る者の目を楽しませる。ダイナミックなジャンプは圧巻だ。一年中命の輝きを感じられる海。徳之島の海は言葉では言い尽くせない素晴らしさを持っている。




ヤコウガイ ヤコウガイ

装飾の材料として古くから珍重されるヤコウガイ。自然が育む七彩が、多くの人々を魅了する 

人々を魅了する七色の輝き

ヤコウガイの工芸作家として、活動を始めて今年で23年目を迎える。島で生まれ、3歳で神戸に移り住んだ私の中には、いつも故郷である徳之島の存在があった。19歳でUターンし、たくさんの人との出会いと経験を重ね、たどり着いたのがヤコウガイだった。

七色の彩を秘めた、真珠層を持つ最大の巻き貝、ヤコウガイは、その美しい輝きから古来より朝廷への献上品として、装飾の材料として珍重され、多くの人々を魅了してきた。世界遺産となった、平泉の金色堂の螺鈿細工などは、耳に新しいだろう。私もまた、ヤコウガイの持つ虹色の光のとりこになった一人だ。

ヤコウガイは、亜熱帯のサンゴ域に分布し主に海草類を食べる。生息域の北限に近い奄美近海のヤコウガイは、栄養分の豊富な海草類に恵まれ、ゆっくりと時間をかけて成長する。緻密性が高く質のよい奄美の貝は、世界で最も美しい光沢を放つと言われている。

サンゴ礁

ヤコウガイが住むサンゴ礁。島全体を守ることが海を守ることにつながっていく

大昔から食用として、装飾用として人々の間で利用されてきたヤコウガイだが、近年、乱獲や開発に伴う環境悪化により激減している。祖先が長く共生してきたヤコウガイを絶やすことなく、未来へつないでいこうと、約20年前から海を守る活動を始めた。

活動を続けるうち、海だけでなく川や山、広く島全体を守ることが、海を守ることにつながると気づいた。自分たちの島は自分たちで守る。そんな思いで、ここ数年は山にも積極的に足を運んでいる。島の山もまた奥が深い。生き物たちの息づかいを身近に感じられる世界は、とてもエネルギッシュで感動の連続だ。







ヤコウガイの稚貝

ヤコウガイの稚貝。長い年月をかけてゆっくりと成長する

島の宝を未来へ伝える

島の自然を見ると、小さな島に多くのものが凝縮されていることを実感する。徳之島は農業の島だ。島の基幹作物であるサトウキビの畑は海岸や山のすぐ近くまで広がり、一年中咲く色とりどりの花と共に、南の島の風景を演出している。山裾の畑では、国の天然記念物のアマミノクロウサギなどの希少動物が姿を現すことも。自然と里との境界が狭く、畑からほんの少し踏み込めばそこにはもう豊かで濃い自然が広がっている。

最近の島の子どもたちは、自然の中で遊ぶことがほとんどなくなった。川で魚やエビを捕ったり、昆虫採集をしたりする子どもの姿は少なくなり、すぐ目の前にある海は親同伴でなければ泳ぎに行くこともない。親たちは仕事が忙しく、子どもたちは海で泳ぐことがないまま大人になっていく。豊かな感性を育てる大事な時期に、足元にある豊かな自然や生き物と触れ合う機会が少ないのはとても残念だ。

放流する子どもたち

ヤコウガイを放流する子どもたち。放流は20年以上続けている

1992年から島内の小中学校を対象に、環境教育の一環として、毎年ヤコウガイの稚貝放流を実施している。子どもたちが島の自然を知り、現状に向き合うことで、身近にある宝に気づき大切にしてほしいという思いで取り組んでいる。美しい海の世界や鮮やかな森の世界、そこに息づく命について話をすると、子どもたちは未知の世界にきらきらと目を輝かせる。子どもたちはとても素直だ。人の手によって少しずつ環境が変化している現状も、真剣なまなざしで受け止めてくれる。

稚貝を海岸で放流するとき、子どもたちは命の重さを感じ、ひとつひとつ丁寧に放流する。海に返ったヤコウガイの稚貝たちは、長い年月をかけて少しずつ少しずつ成長していく。七色に輝く真珠層をじっくりと育てるヤコウガイのように、子どもたちが故郷を愛する心をじっくりと育て、未来が七色に輝くものになればと心から願っている。




池村 茂(いけむら・しげる)池村 茂

1956年生まれ。徳之島町母間出身。3歳で島を離れ神戸で暮らし、19歳でUターンした。ヤコウガイ工芸作家で、工房「海彩」代表。鹿児島県希少野生動植物保護推進員、徳之島町文化財保護審議委員として、島の希少動植物の保護や環境保全活動に努めている。

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奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

あまみんちゅあまみんちゅ[no.30]
かざり 英二さん
(フリーサーファー、フォトグラファー、流木アートワーク「yuribuk」 代表)

奄美市出身。東京で大学卒業後、関東に5年在住。その後、奄美に戻り、農業研修を受け、スプレー菊やパッションフルーツ栽培をして4年間営農した。2004年、単身オーストラリアへ。最初の1年はワーキングホリデーを使い、さまざまな職種を経験した。サーフィンで世界を目指す少年と知り合い、その少年のツアーマネージャーとして世界各地の海へ。その後帰国し、2009年、サーフィンの拠点として再び故郷に戻った。サーフィンの記録のために始めた海中写真も、奄美の海の美しさに魅せられ、今も撮影を続けている。

海中の景色は本当に面白い。魚の群れ、サンゴ、水の色、朝日や夕陽を映し出す水面。さまざまな色がありながら、不思議と調和している。波のトンネルの中を、カメラを手に立ち泳ぎしながら、一瞬を切り取る。

とにかく自然の中で遊ぶことが多かった幼少時代は海、山、川で自然の恵みを獲り、いろんな物を味見していた。「花の蜜とかよく吸っていました(笑)」。中でも海は大好きだった。小学6年生の頃、笠利の用安海岸で、初めて沖合での追い込み漁に参加したときは、「追い込んだ魚の群れが大群すぎて帰りの船が沈没しそうなぐらい大漁だった」という。

ある時、自分が撮影した写真を既製品の額に入れたがどうもしっくりこない。それなら自分で作ろうと思い立ち、海岸で見つけた流木と組み合わせた。奄美や世界中の色彩豊かな海の色に、流木のそれぞれ唯一の形。あまみんちゅサブどこからどんな風に流れてきたのか分からない、風情ある流木で囲むと海の色が変わった。

奄美の海は冬でも水温が高いので、これからの季節もやはりマリンスポーツがおすすめ。「土盛海岸は奄美空港からも近く、水の透明度、白い砂浜、人型の奇岩など奄美一とも言われるほどきれいなビーチです」という。「一度来たら良さがわかる島」。その魅力を少しでも伝えられたら、とカメラ片手に海に向かう毎日だ。

あまみんちゅメイン

DATA

流木アートワーク「yuribuk」

  • 「yuribuk」(ゆりぶく)とは、奄美の方言で「流木」の意味。現在、文さんの作品は約20点ほど。今年はサーファー同志の海中結婚式の写真も撮影した。不定期で奄美、大阪・東京など首都圏でも写真展を開いている。
  • [facebook]あり(「文英二」で検索を。)
  • [HP]準備中
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