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冬も熱い奄美の海
増えるクジラ、よみがえるサンゴ礁、高まる期待!

author: 興 克樹(更新日:2015年1月8日)

大和村今里沖ザトウクジラ

大和村今里沖で見事なジャンプを見せるザトウクジラ=2014年2月3日

これからザトウクジラの季節

奄美の海は面白い。この島に生まれ育ったことに感謝しつつ、海洋生物に振り回される生活を送っている。その魅力は極彩色に彩られる真夏のサンゴ礁だけではない。これからの季節はザトウクジラが熱いのだ!

冬場の観光活性化と「島人の楽しみ」のために、2006年からクジラ・イルカ情報を集めている。年々、遭遇率も上がり、昨年の出現頭数は何と194群341頭と過去最多となった。ザトウクジラは夏の間、高緯度海域(カムチャッカ半島周辺など)で、オキアミや小魚を大量に食べて、冬期に繁殖のため低緯度海域(奄美・沖縄・フイリピン北部)へ回遊する。全ての個体は繁殖海域で産まれているので、毎年帰って来る島人(しまんちゅ)というか島クジラなのだ。

大島海峡嘉鉄カクレクマノミ

大島海峡・嘉鉄沖の海を優雅に泳ぐカクレクマノミ

ザトウクジラは、尾びれの腹側の模様や形状により、個体識別ができる。昨シーズンの個体識別頭数は113頭で、これからのホエールウォッチングは、個体ごとのウォッチングも楽しめるようになるのでは、と期待されている。たとえば「あのホエールソングを唄っていた雄クジラは、今年は彼女できなかったみたい」とか「あの甘えん坊クジラは今年もお母さんクジラと一緒」など、長期的な観察により、貴重な知見(ネタ)が集積されていくだろう。

昨シーズン識別されたクジラの中には、個人的に一番奄美で会いたいと思っていたクジラがいた。尾びれの傷の模様から「Z(ゼット)」と名付けられているそのクジラは、1990年に初めて沖縄で識別されており、沖縄の尾びれカタログの表紙やモニュメントのモデルにもなっている人気者だ。ホエールウォッチングの先進地である座間味村ホエールウォッチング協会との情報交換により、座間味島を旅立ったZは、奄美大島に立ち寄ってから北上してくれるはずと予測して、北上個体の多い東シナ海側で探索し、昨シーズン初めて出会う事ができた。

ザトウクジラZ

ホエールウオッチャーからも人気のザトウクジラ「Z(ゼット)」

座間味島が属する慶良間諸島は、2014年3月5日に国立公園に指定された。2015年度は奄美群島国立公園が誕生予定であり、座間味は英字標記で「Zamami」、ZとAMAMIでZAMAMIとなり、ザトウクジラZが両島の不思議な縁を取り持ってくれた。

今日では、人々の好奇心を満たし、喜びを与えてくれるクジラ達であるが、かつて奄美大島や沖縄島近海で捕鯨が行なわれ、ザトウウジラの生息数は激減してしまった。しかし、1966年からの商業捕鯨禁止により、近年その生息数に回復がみられる。ウォッチング船の間近で浮上するクジラも増えてきた。これからのクジラ達との良好な関係を維持していくため、2013年には、「奄美クジラ・イルカ協会」を設立し、自主ルールの制定や影響評価モニタリングにも取り組み始めている。




アカウミガメ

ダイビングの途中で出会ったアカウミガメ

ウミガメも回復傾向

奄美大島で2014年11月、第25回日本ウミガメ会議が開催された。全国からウミガメの調査や研究に携わる「カメ屋」と呼ばれる方々が一堂に会する全国会議である。

入り組んだ海岸線を有する奄美大島では、大小の砂浜が散在し、陸路の無い浜も多く、全域での調査実施は困難であった。しかしながら、世界自然遺産を目指す島でウミガメの上陸産卵状況すら把握されていないという由々しき状況を打破するため、2012年に関係機関や地域住民とともに全島調査を実施し、上陸1702回・産卵1029回という調査結果が得られた。

産卵のうち約7割がアカウミガメで約3割がアオウミガメであった。シュノーケリングやダイビングで出会うウミガメのほとんどは、アオウミガメの若い個体で、その生息数も増加傾向がみられ、なかには海水浴場や漁港内に住みついている個体もいて、人気を集めている。







あやまる岬礁縁

あやまる岬近くの海底に広がる礁縁。奄美の各地でサンゴがよみがえりつつある

よみがえるサンゴ礁

奄美空港へと降り立つ機上から、眼下に広がるサンゴ礁を観る事ができる。サンゴ礁は、造礁サンゴなどが造り上げた自然の防波堤。荒波から砂浜や集落を守っている。また、海の熱帯雨林とよばれるほど種の多様性が高く、多くの恵みをもたらしてくれる島の天然海鮮市場でもある。

スギノキミドリイシ放卵放精

スギノキミドリイシの放卵放精の様子

かつて奄美の海には世界に誇れるほど大型のサンゴ群集が生息していたが、1998年の夏に大規模なサンゴの白化現象が発生し、サンゴ礁のリーフ内側のサンゴの多くが死滅してしまった。追い打ちをかけるように2000年からはオニヒトデが大発生し、広範囲に食害を受け、サンゴは一時壊滅状態となってしまった。絶望していたものの、オニヒトデの大発生は2007年には収束し、その後新たなサンゴが定着し成長を続けている。

奄美の海には竜宮城が存在する。極彩色に彩られたサンゴの森をウミガメや熱帯魚が泳ぎ回る非日常的な極上空間が海面下に存在する。海上に浮かぶ亜熱帯多雨林からの栄養も注ぎ込む竜宮城は、使者であるウミガメやクジラも増え、かつての栄華を取り戻しつつあるのだ。




興 克樹(おき・かつき)著者紹介

1971年奄美市(旧名瀬市)生まれ。専修大学文学部卒。名瀬市役所、奄美海洋展示館勤務を経て独立。ティダ企画有限会社代表取締役。奄美海洋生物研究会会長。奄美クジラ・イルカ協会会長。サンゴ礁保全やウミガメ類の繁殖生態、鯨類に関する調査研究に取り組んでいる。

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奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

あまみんちゅあまみんちゅ[no.32]
谷口 正樹さん(農園経営、奄美市)

奄美大島中西部・奄美市名瀬西仲勝地区にある谷口さんの農園では、南国ならではのさんさんと降り注ぐ太陽の光を受けて、3月頃から実をつけ始め、いまや鮮やかなオレンジ色に色づき始めたタンカンがたわわに実っている。マンゴー、パッションフルーツ、島バナナ…。奄美では四季を通じてさまざまな果物が生産されているが、冬の定番フルーツといえばタンカンだ。薄皮で甘味と酸味のバランスが良く、とってもジューシー。2月中旬~3月中旬にかけての収穫期を控え、谷口さんは出荷の準備に余念がない。

サーフィンが趣味で通い続けていた奄美に、1999年、妻の正子さんと大阪からIターン。現在、マンゴー、パッションフルーツ、タンカン栽培、養蜂を営む果樹農家だ。初めて奄美を訪れたのは30年ほど前。まだ誰にも知られていない未開のサーフポイントを求め、島中を探し回った。以来、何度も島へ通うようになり、とうとう移住してしまったという。

やり手の営業マンだったが、都会育ちで農業は素人。移住してすぐに、一から地域の人に教わり、30アールの畑でニガウリ、花、パッションフルーツの栽培から始め、現在は果樹園380アールに広がった。「良質のものを作るには基本の土作りから」と、気温が下がる冬に独自の発酵肥料を仕込んでいる。地元の大熊漁港で分けてもらうカツオやマグロのアラ、黒砂糖など奄美ならではの恵みを生かし、あまみんちゅサブ木くず、米ぬかなど数多くの材料や菌類を混ぜ、数カ月かけて仕上げていく。そのおかげか、谷口さんの作る果物は糖度がとても高いそうだ。亜熱帯気候の奄美は気象条件がよく、味の良いタンカンが採れる栽培適地。「生育には昼と夜の寒暖差が必要。標高が高くて日当たりが良く、海風があたり、水切れの良い園地ほど、収穫期が遅くなるものの、味や糖度は格段に良くなります」という。

手つかずの自然が残る魅力いっぱいの島だが、まだまだ産業が少なく、子どもたちは高校を卒業すると、多くが島を出ていく。島に残りたい子は残れる選択肢が持てるような産業が増えればと願っている。

あまみんちゅメイン

DATA

「M.M Farm」

  • タンカンの収穫は2月半ばから。夏はマンゴー、パッションフルーツも。インターネット直販を行っている。タンカンは5キロ2980円(税込み)から。
  • [店舗情報]
    <住所>  鹿児島県奄美市名瀬西仲勝579-101
    <電話&FAX> 0997-54-9191
    <メールアドレス> rakuen@mmfarm.net
    <HP> http://www.mmfarm.net/
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