TOP 奄美なひととき > 2015年2月
shadow

生まれたときからハブ屋、これからもハブ屋
~ハブを通して自然を感じ、想いを繋げる~

author: 原 良太(更新日:2015年2月12日)

夜の林道で出会ったハブ

奄美の自然を話すとき欠かせない毒蛇・ハブ。夜の林道で出会った

奄美の人々とハブの関わり

自然豊かな島、奄美大島。日本でも有数のマングローブ原生林でのカヌーツーリングや貴重な動植物を見ることができるトレッキングなど、温暖な気候によって作り出されるアトラクションを一年中楽しめる自然の宝庫です。その奄美の自然を語る上で欠かすことのできない動物の一つに、毒蛇の「ハブ」がいます。

原ハブ屋・初代店主の原宮哉

人の背丈を超える長さの大物ハブを手にする原ハブ屋・初代店主の原宮哉(1963年ごろ)

今でも島の人は「山に行くときはハブに気をつけるように」と子どもたちに言い聞かせます。春先に実り、地元の子どもたちが森で採る木イチゴには、その甘い香りに誘われて虫や動物が集まります。そして、その動物たちを捕食するハブもそこに現れるのです。ひとたび森の中に入れば人も咬傷の危険性があるため、草やぶのような足元の確認できない場所には地元の子どもたちは近付きません。ハブが森にいるため、自然と関わる時は常に危険と隣り合わせであることを島の人は子どもの頃から認識させられています。

今から40年ほど前、ハブによる被害を少しでも減らすため「ハブ撲滅推進協議会」が設立され、ハブの一斉駆除が行なわれていた時代がありました。今のように医療機関や交通機関も充実しておらず、咬傷を負ってしまうと命を落としかねない危険な生き物なので駆除は当然のことでした。

しかし近年では、医療機関への血清の配置や交通事情の変化により、咬傷者に対し迅速に対応できるため命を落とす人はほとんどいません。時代の移り変わりにより、駆除され続けていたハブも個体数を減らしすぎることによる本来の生態系への悪影響を危惧し、「共存」することが自然と人との関係には不可欠であると考えられるようになりました。現在では「撲滅」でなく「共存・共生」を第一に考え「棲み分け」を図ろうという方針に代わり、協議会も「ハブ対策推進協議会」に改名されました。乱獲出来ない環境があるからこそ、子どもたちは限られた資源・自然に感謝して育ちます。そのため、島の人は「共生」を無意識のうちに学んでいるのではないでしょうか。

これも幼少の頃から自然を身近に感じることのできる奄美大島の環境があってのことだと思っています。




ハブのショー

ハブの生態や奄美の自然について学ぶことができるハブのショー

「ハブ屋」として奄美の自然を表現する

ハブは直射日光に弱く夜行性なので、出没する場所もある程度限られています。そのため、日常生活の中でハブと人が接することは稀であり、市街地に住む人が自然のハブを目にする機会は極めて低いと言えます。また、農業や山中で仕事をする際も、ハブに対する知識があれば、ある程度の危険は回避できます。

現在、奄美本島には8種類の陸生の蛇がいます。毒を持つ蛇も、無毒の蛇もいます。すべての蛇を見分ける必要はありませんが、万一に備え、「ハブ」と「その他の蛇」の違いを知っておくことは、奄美の自然に触れる上で非常に大切なことだと思います。

ハブ革のアクセサリー

美しいハブの革を使ったアクセサリー

私たちは1948年から親子三代にわたり、ハブの加工販売を生業としてハブと関わってきました。ハブのショーやハブ製品を通じて、お客様にハブのことを「知り・理解」して頂けるように努めています。ショーではハブをはじめ奄美に生息する蛇を紹介することで、ハブとその他の蛇の違いや自然との関わりを説明しています。普段、地元の方でも間近で目にすることのほとんどないアカマタなどの無毒蛇も見てもらうことで、ハッキリと模様などの違いを確認することができます。

また、ハブの革や背骨などの素材を使い、一点ずつ手作りで製品を作っています。ハブの背骨を使ったアクセサリーなど、製品によっては、ご来店されたお客様から「一見するとハブ製品だとは分からない」という声を頂くことがあります。普段から身につけられるよう、さりげなくハブの素材を使うことで、蛇が苦手な方でも興味をもって頂ける様に努めています。ハブ製品を通して奄美の自然を知るきっかけ作りが出来れば幸いです。

古くから魔除け・厄除けや金運を招く縁起物などとして重宝されてきたハブ製品。お財布に入れるお守りなど普段から身の回りにおいて頂けるものだからこそ、日常生活の中で奄美の自然を身近に感じられるアイテムになるのではないかと考えています。







ハブの商い

ハブの乾物・粉末・油の製造を主に1948(昭和23)年に商いを始めた

奄美の自然を後世に残すために

「共存・共生」に対する考え方は、人それぞれかと思います。私たちは、家業としてハブ屋を営んでいく上で、少なからずハブを必要とします。そのハブの大半は地元の人の持ち込みによるものですが、私達はハブ皮のなめし加工からお財布などの製品の製作にいたるまで「手作り」にこだわり、家族5人の手で加工できる量だけに制限しながら、ハブを扱っています。

ハブを捕獲

木の枝にいたハブを捕獲する原ハブ屋・初代店主の原宮哉(1969年ごろ)

その昔、ハブが「マジムン(魔物)」と呼ばれていた時代がありました。これは人の恐怖心を煽ることで山の深部まで人を近付かせず、自然を守ろうとした先人の知恵であるとも考えられます。これまで、人やその他の動物の侵入を妨げる「抑止力」として奄美の自然を守ってきたハブ、人の生活圏に現れて危険な生き物として駆除されているハブ、どちらも同じハブです。自然の恩恵を受けていることに感謝し、これからもハブに対する知識を伝えていくことで、人の手で自然を守り「共存・共生」を考えてもらえるように努めることが、祖父の代から受け継ぐ「ハブ屋」の重要な役割だと考えています。

奄美の豊かな自然を、直接肌で感じることの出来るカヌーツーリングやトレッキングなどと同じように、私たちはハブについて伝える場をつくっていくことで、奄美の自然を心から感じてもらえるお手伝いができれば。そう考えています。




原 良太(はら・りょうた)著者紹介

1980年奄美大島生まれ。毒蛇ハブの加工販売をする「原ハブ屋」を、両親、兄弟と共に家族5人で経営。1948年創業以来、祖父から受け継がれてきた加工技術を活かし、革製品、アクセサリーなど幅広く商品を展開中。実際に奄美のハブを間近で見られる社長のショーは一見の価値あり。

shadow

奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

あまみんちゅあまみんちゅ[no.33]
山城 政勝さん(山口製菓営業・製造、喜界町塩道)

サトウキビの刈り入れシーズンを迎えた奄美大島。南国といえども寒さが増す1~3月、喜界島でこの時期しか製造・販売されていない季節限定の「伐採パン」がある。製造元・喜界町塩道の山口製菓の山城政勝さんによると、1967年の創業当時、島には大手メーカーのパンや和洋菓子などが出回っていなかったため、「おいしいカステラのようなお菓子を食べられるように」と山口英夫社長がアイデアを出し、作ったのが始まり。サトウキビの収穫は、現在はほとんど機械化されているが、昔は1本1本手で刈り取っていた。そんな中、腹持ちがよく甘くておいしいと、収穫作業の合間、午前10時と午後3時の休憩時間や子どものおやつに食べられるようになり、いつしか「伐採パン」と呼ばれるようになったそうだ。

パッケージは昔から変わらず、ブルー地にクラシカルな文字で「バタークリームロール」の白色の印字。正式名称は「カステラパン」で1個118円。「伐採パン」という名前からどんなワイルドな形かと思いきや、アーモンド形のカステラ生地に、こくのあるバタークリームが挟んである見た目もかわいい洋菓子だ。「とっても素朴な味のパンですが、地元の方々をはじめ、最近では島外の方からも懐かしいとお問い合せいただくことが増えています」と微笑む山城さん。

沖縄生まれ、沖縄育ち。東京で知り合い、結婚した妻の家業を手伝うため、1999年に喜界島に移住した。店の目の前の塩道長浜公園の景色が好きだという。あまみんちゅサブ透き通った海の色と集落の子どもたちが遊ぶ姿に心がほっとする。特に冬の朝日が昇るころの優しい雰囲気が好きで、1日の元気をもらえる気がするという。「この場所で暮らし、子育てできて幸せ。義父が築いてきたものを大切にしながら、奄美の自然の恵みを生かした新しい菓子作りにも取り組みたい」。昔と変わらず愛され続けるパンや喜界島名産の黒糖菓子作りに熱い思いを抱いている。

あまみんちゅメイン

DATA

「山口製菓」

  • 喜界島名産のサトウキビから作る黒砂糖を使った昔ながらの菓子を製造。「くるざ~た豆」「ミルク黒糖」「黒糖そら豆」などの黒糖菓子は、お茶請けの定番。健康志向から、お土産品として、ネット通販でも人気。
  • [店舗情報]
    <住所>  鹿児島県喜界町塩道1504-3
    <電話> 0997-66-0028
    <FAX> 0997-66-0010
    <店舗紹介HP(喜界島観光物産協会)> http://kikaijimanavi.com/shukutawn/shopping/shouten/yamaguti.shtml
    <喜界島特産品通販サイト「けらじ屋」> http://www.kerajiya.com/
shadow