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島の“小さなシゴト”をつくる

author: 田向 勝大(更新日:2015年11月12日)

白い花を付けたゴマ

白い花を付けたゴマと、喜界島で栽培に取り組む私の母

リアルな地域活性化

乾燥させたゴマのさや。四つの部屋に分かれていて、80~100粒がきれいに収まっている(上)、喜界島に広がるゴマ畑(下)

2009年秋。東京都心のとあるスーパーの一角で私は目を丸くしていた。地元喜界島で採れたゴマが、オーガニック食品などの流行りのキャッチコピーと共に驚くほどの高値で陳列棚に並んでいたのを発見し、衝撃を受けていたのだった。「島の人達はこの価格を知っているのだろうか?」そんな疑問から小さなしごとづくりはスタートした。

当時、父を亡くなり元気をなくしていた母。これまでずっとサトウキビ栽培を生業の中心としてきたが、女性1人で続けるには重労働。このまま農業を続けるかどうか迷っていた彼女に私は「ゴマづくり」をするように説得をした。これまでと同じような仕事ではなく、ひとり島で暮らす彼女にとっての生き甲斐となり得るような仕事にしていく必要があった。大学で「地域活性化」というテーマを学んでいた私にとって、机の上の話ではなく、リアルな地域活性化が始まった瞬間だった。

真夏の太陽を浴び、乾燥されるゴマ

真夏の太陽を浴び、乾燥されるゴマ

小さな島の価値を考えてみる

国内に流通するゴマは99%が外国産であり、国産の胡麻はそれだけでも希少性が高い。その中でも喜界島は白ゴマの生産量日本一。この小さな島にしかない貴重な在来品種が日本のゴマを支えている事を誇りに思っている。その一方でゴマの出荷価格はここ数年で3割近く下がっている事も知っていた。農家のモチベーションも下がってきていた。

収穫したゴマは右端のように茶色くなるまで乾燥させる

そんなゴマづくりを、母の生き甲斐となるような、この先も続けられる仕事にするためにはどうしたらいいか。まずは自分の足で東京のスーパーを回り、マーケットを調べてみた。その結果、農家からの出荷価格の5~6倍の価格で売られている事実を知った。実は喜界島のゴマにはこんなにも高い価値があったのだと知った。この価格差を埋める事は、母だけでなく島のゴマ農家の生き甲斐にも繋がると確信した。そのために、付加価値をつけていくためのマーケティングと流通構造の変化が必要だと考え、自分達の商品開発と流通開拓を行う事にした。




空(スカイブルー)と海(コーラルブルー)の二つのブルーを背に、黄金色に輝くゴマ

美しいゴマしごとの風景

喜界島ではサトウキビ栽培の合間の畑を利用してゴマ栽培を行っている。5月末頃から種まきを行い、梅雨を過ぎた頃にゴマの白い花が畑一面に広がる。夏の強い日差しを受けたゴマは、8月後半頃から9月末にかけて収穫のピークを迎える。その収穫風景も特徴的で、道路や集落の中などのあちこちで乾燥のためにゴマが並べられた”セサミストリート”が出現する。この時期の風物詩にもなっているが、この写真のような海辺での作業風景もとても美しい。




島の空と海、ゴマをイメージしたパッケージ(上)、東京のイベントに出品されたゴマのフレーバーオイル(下)

小さなシゴトづくり

マーケティングを元に出来上がった商品は、香り高い喜界島のゴマの特徴を活かし、アイスにかけて香りを楽しむフレーバーオイルとなった。島で昔から親しまれているゴマと黒砂糖をつかったお菓子にちなんだ名前を付けた。デパートの催事やネット通販を通してギフト向け商品として販売している。同時に、島の農家さんから集めたゴマをこれまでにないルートで飲食店や菓子メーカー等に流通させる取組みも、小さい規模ながら始めた。大手鉄道会社との企画や日本を代表するレストラン、都内の高級すし店等でも食材として使用されている。

丹精込めて育てたゴマを収穫する母

今年もゴマを収穫する母の顔には充実感が溢れている。ゴマを購入した方とコミュニケーションをとったり、ゴマがどのように流通しているのかを自分の目で確かめるため、メーカーの工場にも足を運ぶ事もある。メディア等の取材に応える姿からはゴマづくりに対する自信も覗わせる。彼女の収穫作業は今月まで続く。

少量のゴマを栽培する島の農家さんには年配のおばあちゃん達も沢山いる。ゴマを栽培し孫にお小遣いを渡す事が彼女達の生き甲斐なのだという。小さいけれど、これも立派な仕事だ。「島の中で暮らし、小さくても生き甲斐と感じながら続けられるシゴト」がとても大事なのだと再認識できた。胡麻づくりのほかにもこういった「島の小さなシゴト」を、これからもつくり続けていきたいと思う。




田向 勝大(たむかい・しょうた)著者紹介

鹿児島県喜界島出身。慶應大学政策・メディア研究科修了。学生時代から農業・地域に携わるプロジェクトなどに参加。東京から島に関わる仕事を続けている。喜界島のゴマオイル 「GOMACACI」を販売。www.gomacasi.com

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奄美が大好き!なわたしが、旬の奄美をご紹介

あまみんちゅあまみんちゅ[no.42]
(いのり) 省吾さん(Sunny Days代表・奄美市笠利町)

奄美空港の目の前に、旅行者や帰省客を迎え入れるかのように佇むお店がある。所狭しと並べられた奄美らしさにこだわったオリジナルTシャツが、南国情緒を醸し出す。店名は「サニーデイズ」。オーナーの祈省吾さんは「煌々(こうこう)と照りつける奄美の太陽がイメージ。陽の当たる場所的なお店にできれば」と笑う。

笠利町出身。物心ついたころから、絵を描くのが好きだった。中学生になると、絵を描く仕事に就きたいと思うように。それと同時に都会への憧れも強くなり、離島のハンディやデメリットばかりが目に付くようになっていた。高校卒業を機にグラフィックデザインを学ぶため大阪の専門学校へ。そのまま大阪で就職活動に入った。

転機は2002年。実家の雑貨屋が閉店することになり、3カ月間だけ手伝うことになった。そこで店番をしながら、暇つぶしにTシャツをデザインして店頭へ並べてみた。すると、「面白い」「こういうのがほしかった」と大盛況。好きな絵を描ける自由さにもハマった。

すぐに大阪の家を引き払いUターン、友人の助けを借りながらオリジナルブランドを立ち上げた。奄美の動植物などをアレンジした個性的なデザインTシャツは、地元の若者をはじめ旅行客にも人気を博し、今では奄美在住の2人組ユニット・カサリンチュとのコラボ商品なども手がける。

あまみんちゅサブ

Uターンして思うのは、自然あふれる奄美のすばらしさ。「離島は不便と思っていたが逆だった。分かっていたはずなのに」と話す。デザインは、いずれも奄美からヒントをもらっている。奄美でしかできない、奄美だからこそできるTシャツばかりだ。「Tシャツを通して、若い世代や子どもたちに奄美の良さを伝えていければ」。サニーデイズのTシャツには、このような思いも込められている。

あまみんちゅメイン

DATA

「Sunny Days」

  • オリジナルTシャツのほか、古着やセレクトアイテム、ハンドメイド雑貨など、奄美大島や南国をイメージしたデザインを中心に取り扱っている。島バナナや渡り鳥のアカショウビンをアレンジしたデザインTシャツが人気。メンズ、レディース、キッズまでそろえる。ネット通販にも対応。新商品の紹介などのほか、奄美の日常などを伝えるブログも展開中=http://ameblo.jp/32-days/

    [店舗情報]
    <住所> 奄美市笠利町和野474
    <電話> 0997-63-0395
    <営業時間> 午前10時半~午後7時
    <定休日> 火曜日
    <HP> http://sunnydays.shop-pro.jp/
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